特定技能1号2号と技能実習生の違いとは?全12分野についてわかりやすく解説!
初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。<外国人と働く>をテーマに執筆しています。
外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。
今回は「在留資格、特定技能1号2号」についてお話しします。
この記事を読めば、現在急増している在留資格である「特定技能1号2号」についての基礎がわかります。また、記事内では技能実習との違いについてもご説明しています。
外国人労働者を雇用する際になくてはならない情報が詰まっています。是非最後までお読みください!
在留資格「特定技能」とは?
特定技能の成り立ちと創設の目的
「特定技能」とは、日本に入国した後、在留し何らかの活動を行うための資格(在留資格)のひとつです。2019年の法改正により新たに創設され、現在日本で認められる唯一の「労働力確保」を目的とした在留資格です。
以前の在留資格では、現実問題として人手不足が深刻化してはいるものの、単純労働者として外国人を雇用するための在留資格は理論上、存在しないことになっていました。その代わりに、技能の習得と国際貢献を目的に創設されたはずの「技能実習」や、勉学が目的の「留学」の在留資格を持つ外国人が実質的な労働力とされてきました。
中には悪質な企業や教育機関(日本語学校)などから「安価な労働力」と見なされ、劣悪で違法な労働環境で酷使される外国人が急増し、問題となっていました。
このため、国は、在留資格に「特定技能1号・2号」を加え、特に人手不足が深刻な12業種(統合前は14業種)での外国人労働を限定的に許可しました。この改正により、技能実習生は本来の役割に立ち戻り、特定技能の外国人が増加することが期待されています。
特定技能の受け入れ人数と充足率
特定技能の受け入れ人数は、新型コロナの影響で伸び悩んではいますが、2022年(令和4年)6月末時点で、特定技能1号の入国数は87,471名(2号は1名のみ)。2023年度までに12業種全体で約34.5万人の特定技能の受け入れを見込んでいます。
受け入れ充足率は特定技能全体で、約25%に留まっており、今後2023年までに受け入れは加速していくと予想されます。分野別では、充足率の高い「素形材素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」で約56%、「飲食料品製造業」では約87%が既に在留しています。
しかし、「宿泊」で0.7%、「ビルクリーニング」も約3%と、充足率の低い業種もあるのが現実です。「宿泊」に関しては、インバウンド需要の回復具合によって、外国人労働者の雇用も加速していくと考えられます。新型コロナの影響もまだまだ色濃いため、今後の動きに注目していきましょう。
その他の在留資格についてや、ビザと在留資格の違いについては、
<違反すれば強制退去もありうる? 外国人の在留資格(4タイプ)のまとめ>で詳しく解説しています。是非ご一読ください。
各種試験合格等の条件について
特定技能の在留資格を得るための前提条件として、外国人本人が18歳以上である必要があります。
それ以外の条件として、「特定技能1号」「特定技能2号」いずれも各特定産業分野の試験に合格する必要があります。例えば、自動車整備分野であれば、自動車整備分野特定技能評価試験」等、ビルクリーニング分野であれば、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」が技能試験として課されます。
さらに、「特定技能1号」は日本語試験にも合格する必要があります。国際交流基金日本語基礎テスト、または、日本語能力試験N4以上、とされています。
ただし、技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について関連性が認められる場合、試験が免除されます。
各技能試験・日本語試験については、分野によって異なります。特定技能総合支援サイト、または、各業界団体のHPでご確認ください。
採用活動、マッチングについて
特定技能制度では、技能実習生とは異なり、監理団体や送出機関は設けていません。受入れ機関は直接採用活動を行うか、国内外の職業紹介機関を活用し、採用活動を行うことになります。国内での募集であれば、ハローワーク等を通じて採用することも可能です。
採用する特定技能外国人の国籍によっては、当該国の法律等によって所定の手続を経ることが求められている場合があるので、詳細は出入国管理庁の特定技能総合支援サイト内にある「送出手続早見表」で記載されている手続に従ってください。以下で特に記載のない場合は、日本側受け入れ機関が、特定技能外国人を新たに受け入れる際の手続きを記載しています。
【 送出手続早見表での記載国 】
- カンボジア
- インドネシア
- ネパール
- フィリピン
- ミャンマー
- タイ
- ベトナム
- モンゴル
- ウズベキスタン
- スリランカ
- インド
その他詳細については、直接各国の駐日大使館に問い合わせましょう。
特定技能の受け入れ分野とは?
特定技能は、今後も人手が集まりにくい分野に限って認められた労働資源としての在留資格で、慢性的な人手不足解消に大きな期待が寄せらせています。
この章では、特定技能1号の受け入れ分野12業種(統合前は14業種)、特定技能2号の受け入れ分野2業種、についてご説明します。
特定技能1号の受け入れ分野(12業種)の所管行政機関と受け入れ見込み数
以下の12業種が特定技能1号での受け入れ分野です。
それぞれの分野の所管の行政機関と政府試算の受け入れ見込み数をまとめました。2023年までの受け入れ見込み総数は34.5万人と試算されています。
【 厚労省 】2分野
- 介護: 60,000人
- ビルクリーニング: 37,000人
【 経産省 】1分野(統合前3分野)
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業: 31,450人
【 国交省 】5分野
- 建設: 40,000人
- 造船・舶用工業: 13,000人
- 自動車整備: 7,000人
- 航空: 2,200人
- 宿泊: 22,000人
【 農水省 】4分野
- 農業: 36,5000人
- 漁業: 9,000人
- 飲食料品製造業: 34,000人
- 外食業: 53,000人
特定技能1号のポイント
特定技能1号の特徴は、主に3つ。
- 在留期間の定めがあること(通算で上限5年)
- 日本語能力の試験で確認するということ(JLPTでN4相当レベル以上)
- 受け入れ機関(企業)は外国人受け入れにあたって支援が義務付けられていること
特に3に関しては、「1号特定技能外国人支援計画」の策定・実施として、以下の支援が必要になります。
- 事前ガイダンスの実施
- 出入国する場合の外国人の送迎
- 適切な住宅の確保に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 外国人と日本人との交流の促進に係る支援
- 転職支援
特定技能2号の受け入れ分野(2業種)
特定技能2号の受け入れ分野は2業種のみ。熟練した技能持つ外国人材が求められる業種です。
特定技能1号と異なる点は、主に3つ。
- 在留期間を更新すれば、通算期限は定めがない。
- 日本語能力の試験での確認が不要。
- 家族の帯同が可能。
日本で家族と生活することが可能になり、永住を目指すこともできます。日本での長期間のキャリアパスを描けるのが、特定技能2号の特徴です。
特定技能2号のポイント
特定技能の雇用の流れとは?
ここでは、
①技能実習・留学など、その他の在留資格をもって日本国内に既に在留している外国人を雇用するまで
②海外から、特定技能の在留資格をもって新規で日本で就労する外国人を雇用するまで
とに分けて紹介します。
①②で共通していることは、まず特定技能外国人として在留するための試験(技能試験、日本語試験)をクリアすることがスタートです。その際、技能実習2号を修了した外国人であれば、試験は不要になります。
青色の枠内は雇用主が実施するものです。雇用契約締結、支援計画策定が必要になります。
①日本国内在留外国人
日本国内にいる外国人の場合は、現在の在留資格から「特定技能1号」への在留資格変更許可申請が必要になります。例えば、留学生として専門学校で学んでいた外国人の場合、「留学」から「特定技能1号」への変更を申請します。変更許可申請は地方出入国在留管理官署にて審査され、問題なければ資格変更が認められます。
②海外在留外国人
日本に入国していない外国人の場合は、雇用契約締結➡試験計画策定を雇用主が行った後、在留資格認定証明書が必要になります。つまり、日本に在留するための資格を審査してもらわなければなりません。その後、日本に入国するための「査証(ビザ)」を在外公館にて発行してもらい、入国が可能になります。
よくある間違いに、「特定技能ビザに変更して働きます」という表現がありますが、正しくは、特定技能は「査証(ビザ)」ではなく、「在留資格」です。査証と在留資格の違いについては、
<違反すれば強制退去もありうる? 外国人の在留資格(4タイプ)のまとめ> で詳しくご説明しています。
特定技能1号2号と技能実習の比較表
最後に、特定技能1号、2号と、技能実習との違いを比較表でまとめました。
特定技能も技能実習も、アジア諸国の外国人の比率が多く、従事する業種も似ているため、混同しやすいかもしれません。大きな違いとしては、在留資格としての目的が「労働力不足の解消」と「国際貢献、技術移転」であることです。
技能実習は、日本で学んだ技術を母国に持ち帰り、発展に貢献するための在留資格ですので、特定技能のそれとは大きく異なります。
特定技能は、人手不足解消を目的としているため、基準となる技能試験に合格すれば、いわゆる単純労働者としての雇用も可能です。従事できる業種であれば、転職・転籍が可能であることも大きな特徴です。
まとめ
いかがでしょうか。
2019年の法改正から新型コロナの流行を経て、徐々に増加傾向にある「特定技能」についてご説明しました。人手不足が深刻となっている分野、日本人の若手・後進育成が滞っている業種の救世主となるか、今後注目の在留資格です。
インバウンド需要が持ち直すことで、「宿泊」や「外食業」で今以上の労働者確保が必要になるかもしれません。実際に、外国人労働者の存在なしでは成り立たない業界も出てきています。
みなさんの身近で働いている外国人がどの在留資格を持っているか関心を持っていただくきっかけとして、この記事をシェアしていただければ幸いです。
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