部下との意識共有がポイント!上司としての振る舞いや考え方の革新の仕方とは?部下のタイプ別育成方法②

初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。<外国人と働く>をテーマに執筆しています。

外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。

今回は「部下のタイプ別、上司としての振舞い方や考え方」についてお話しします。

この記事を読めば、部下のタイプ別育成方法がわかります。また、記事内では部下への具体的な接し方や注意点についてもご説明します。

最後まで是非お読みくださいね。

優れたリーダー、できる上司の役割は「部下育成」?

この記事を読んでくださっている方の多くは、チームリーダーや何らかの役職に就いている管理職の方ではないでしょうか。部下(チームメンバー)を管理し、目標達成に向けて日々業務に邁進されていることと思います。

そんなリーダーのみなさんの大きな役割であり、大きな課題が「部下育成」かと思います。リーダーが、自分を超える次世代の管理職やスペシャリストを育成することは、組織が存続するための大きな命題であるはずです。後進を育成できなければ組織全体が年々衰退の一途をたどってしまうからです。

そのため、リーダーには常に「部下育成」の重責が付きまとい、時には苦悩されることもあると想像に難くありません。なぜなら、部下と言っても、様々なタイプが存在し、その実「困った部下」「困らない部下」に分けて考えてしまうのではないでしょうか?

しかし、「困った部下」を敬遠するわけにはいきませんよね。プロの管理職として、部下育成においてはどんなタイプの部下にも向き合っていただかなくてはなりません。

そこで、この記事では、「困った部下」に割いていた時間と労力を少しでも軽くするために、「困った部下」をタイプ別にご紹介し、事例ごとに対処方法をご提案します。全ての部下の方にとっての完璧な対処方法ではない可能性がありますが、試していただく価値がある内容となっているかと思います。

この記事が、部下の方々の成長につながり、次世代の人材をより豊かにするための一助となりますことを願っております。

困った部下の行動の原因は、上司の自分かも?

「困った部下」と一言で言っても、部下が変わるように導く方法と、上司である自分を変える方法があります。「困った部下」のタイプによっては、自分自身の考え方、行動を変えたほうがいいこともあるのです。

過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる

私が日々心に留めている言葉です。

もちろん、一緒に働く仲間ですから、部下の成長のために教え導くことは必要なことです。しかし、「困った部下」の原因は、部下自身ではない可能性もありえます。上司であるあなた自身の考え方や行動が変わることで、部下にもいい影響を与えることができるかもしれません。

働きかけたところで変化してくれるかわからない他人に期待するより、より確実な自分に変化を起こしましょう。部下育成を通じてあなた自身が成長するチャンスが到来した、と捉えることもできます。様々なタイプの部下にも対応できるように「上司力」を鍛えていきましょう。

「困った部下」シリーズ①をお読みいただいていない方は、是非<使えない部下の育て方 仕事ができるように育てるための正解とは?部下のタイプ別育成方法①>の記事もご一読ください。

タイプ①外国人の部下型

「外国人の部下型」の特徴とは、

  • 日本人とは価値観が違うこと
  • 日本人とは文化・習慣が違うこと

が挙げられます。その解決策は、日本人、外国人の双方が価値観を理解し合うことです。

多様性(ダイバーシティ)の中でも、3大ダイバーシティといわれているのが、以下の3つです。

  1. ジェンダー(性差)
  2. エイジ(年齢)
  3. グローバル

特に、3.グローバルに関する変化は著しく、みなさんもグローバル化の波を日々感じているのではないでしょうか。

日本国内の外国人労働者数は、約172万人(2021年3月末)となっており、外国人と一緒に働く時代はすでに到来していると言っても過言ではありません。国籍別では、ベトナムが最も多く44.3万人(25.7%)、次いで中国、フィリピン、ブラジル、ネパールと続きます。実際に外国人の部下や同僚を持つ方も多いのでは?

そこで問題となってくるのが、外国人への接し方です。外国人の多くは日本語を巧みに操っていても、価値観、文化、習慣など日本人との違いに戸惑う場面もあるかと思います。

私は日本語教師として、のべ5,200人以上の外国人留学生に日本語を教えてきました。その経験から言える在留外国人への接し方のポイントのひとつは「ひとりの生活者として相手を尊重する」ことだと思います。日本人には普通に接することができるのに、外国人相手では不自然になってしまう、その理由は、おかしな特別扱いをしているからではないでしょうか?

  • 日本語が不自然であることを理由に半人前扱いする
  • 日本人グループの輪の中に入れない
  • 相手から求められていないのに英語で話しかける
  • どの国籍の外国人でも「ガイジン」とひとくくりにしてしまう

こんな言動をしている人を見たことはないでしょうか?

日本で仕事をし生活をしている以上、その人は会社の一員であり、仲間です。その仲間を尊重するのであれば、相手がどんな価値観を持っているか、どんなものを大切にしているかを理解することから始めてみてください。

具体的な手法として、「バリューカード(価値カード)」をご紹介します。これは、2001年に「Personal Values card Sort」として、ウェルボーン大学のW.R.ミラーらによって発表されたもので、個々が持つ価値観を認識するために使用されます。

※日本語訳されたものが公開されているので、以下引用元をご参照ください。引用:「価値カード」Research map土屋政雄 2019/06/16公開

価値カードのイメージ画像

使い方は、80個ある価値観のカードから自分が大事だと思うものをピックアップし、その中から絶対に譲れないベスト5を選びます。次に大事にしていない価値観からワースト5を選ぶ、というものです。

外国人の部下や同僚の方と、ぜひバリューカードをやってみてください。「外国人だから、自分とは違う」と決めつけ、距離を置くのではなく、相手を知るためにアクションを起こしてみてください。相手の価値観を知ることでお互いに歩み寄り、国籍の垣根を越えて理解し合うための第一歩にできるかもしれません。

タイプ②𠮟ると落ち込む型

「叱ると落ち込む型」の特徴は

  • 常に叱られることを恐れている
  • 叱られた理由を理解できていない

が挙げられます。その解決策は、叱り方を変えることです。

ただ声をかけただけなのに、部下が異様に委縮しているように感じたら、叱られたことを引きずってしまい恐怖心を感じていることが原因かもしれません。

「叱る」という行動は意外と難しく、アンガーマネジメント(怒りの感情をコントロールすること)が必要です。自分の感情(怒り)を発散させてスッキリするための行動は「叱る」ではなく、感情に振り回された「怒る」に近い行動です。怒りの感情は誰しも持っているもので、少しもおかしいことではありません。問題なのは、間違った方法で怒ること。相手の人格を否定したり、暴言や大声などで相手を怖がらせるような、間違った叱り方をしないように注意しましょう。

部下に対して「叱る」というアクションが多い場合は、「褒める」ことも意識的に行うようにしてみてください。「叱る」は一点集中、長時間クドクド説教せず、時間は短めに内容は濃くすることがポイントです。反対に「褒める」は頻度がポイント。どんな小さな褒めどころでも、「いいね」と思ったらすかさず褒めるようにしてください。褒められた相手は、褒めてもらった内容を「良い行動」と認識して、繰返し行うようになります。良い行動は良い結果を生み、その行動が習慣化されるようになるのです。

また、部下が「なぜ叱られたか(理由)」「何について叱られたか(内容)」を理解できるような伝え方をすることも重要です。叱るという行為は、「相手の成長を促すためのアドバイス」です。決して相手を否定して終わりにせず、今回の失敗の原因は何だったのか、次はどのようにすれば失敗しないのか、部下に考えさせ、部下の行動が良い方向に変化するように導くのが上司の役割です。

「叱る」に関する詳細は、<デキる上司の上手な叱り方はコレ!時代遅れのダメ出ししてませんか?>をご一読ください。

DESC法で相手に納得させる

交渉や頼み事をする場合に有効な提案方法として「DESC法」があります。自分の気持ちや考えを整理して伝えることができるもので、相互の歩み寄りが実現し、相手が納得した結論を出すことができます。

DESC法は、Assertive Communicationを体系的にまとめ4つのステップに分解したものです。「Describe(描写する)」「Express(説明する)」「Suggest(提案する)」「Choose(選択する)」の4つのステップで会話を進めることで、有効な意思伝達を行い相手を納得させることができます。

DESC法の説明画像

Describe(描写する)では、目の前の課題に対して、現状や相手の行動を客観的に描写した上で事実のみを相手に伝えます。ここで重要なのは、事実のみを伝えることなので、自分の感情を入れたり推測で話を進めることがないように意識しなければなりません。推測は、正しい情報を相手には伝えきれないというデメリットを生じさせるため注意が必要です。

Describe(描写する)の例:事実を客観的に 「結局、〇〇の納期には間に合ったようですが、お客様へのご連絡が遅くなってしまったようですね。」

Express(説明する)では、Describe(描写する)した内容に対する自分の意見や感じていることを伝えます。ここでは、自分の気持ちや感情を素直に表現していくことが大切です。ただし、事実と論点がずれてしまったり、感情的になりすぎて相手を攻撃しないよう注意しましょう。

Express(説明する)の例:自分の意見 「お客様のご期待に応えられず、残念です。」

Suggest(提案する)では、課題を解決するためのアイデアや代替案などを具体的に提案します。相手にしてほしいこと提案する場面なので、命令や強制にならないようにしてください。

Suggest(提案する)の例:解決策 「次、予定より遅れる場合、必ず私に報告してくれますか。」

Choose(選択する)では、相手がこちらの提案を受け入れた場合とそうでない場合、それぞれに対して結果や選択肢を示します。自分からの提案が全て受け入れられるとは限らないので、そうした場合でも、より良い提案ができるように再度、Suggest(提案する)を実施することも必要です。

Choose(選択する)の例:

相手の選択がYESの場合 「報告してくれたら、事前にフォローできますからね。」

相手の選択がNOの場合 「じゃあ、納期に間に合うような他の方法を考えましょう。」

タイプ③言い訳型

「言い訳型」の特徴は、

  • 自分の非を認めようとしないこと
  • 防衛機制が強く、傷つくことを恐れていること

などが挙げられます。その解決策は、言い訳をする行為は正常な心理作用であると認識したうえで対応することです。

何か問題が発生した時に、言い訳ばかりで自分の非を認めないタイプの人ってどの職場にもいると思います。そのタイプの人の多くの思考プロセスは、「失敗したのは●●が悪いからだ」=「自分は悪くない」と自分自身を守ろうとしているのです。原因が他にあると主張するタイプの人は、「防衛機制」が強い人なのかもしれません。

防衛機制とは、切迫した状況のときに自分が傷つくことを防ぎ、自分自身を維持しようとする心の働きです。危機的な状況や自分にとって不都合が多い状況、受け入れがたい苦痛にさらされた時には、精神的なストレスを感じます。精神的なストレスによる精神崩壊を避けるために働くのが防衛機制です。

防衛機制自体は、心理的に誰にでも認められる正常な心理作用ですが、人によっては常習的に強く現れることもあります。この概念はフロイト親子のヒステリー研究から考え出され、のちに整理されたもので、大まかに分けると11種類あります。以下はその一部の例です。

  • 合理化:もっともらしい言い訳をする。達成できなかった欲求に対して、理論化して自分を納得させる。 例)契約が取れなかった ➡ 「自社の商品が高すぎる」と言い訳する
  • 抑圧:不安や欲求不満を無意識に封じ込めて忘れようとすること。 例)いじめられていた過去がある ➡ 忘れてなかったことにする
  • 逃避:困難な状況から逃れようと、逃避する場を設ける。例)試験前に大掃除をする(現実への逃避)。試験前に高熱や腹痛を訴える(病気への逃避)。試験前に将来の夢や試験後のことを想像する(空想への逃避)。

上司としてはまず、それが防衛機制という正常な心理作用であることを認識することです。その上で冷静に、相手に問いかけアドバイスする形で接するように心掛けてください。このタイプは理論的な反応に弱い傾向にあり、理論展開をしてうまく回避するのが賢明です。

重要なのは、相手の理不尽な言い訳が自分に向けられたとしても、感情的に対立しないことです。真正面からぶつかると、無意味な怒りの応酬になってしまうのでご注意を。自分の意見を伝え、冷静かつ建設的に話し合いをしてください。

✖「人のせいにするな」「言い訳せずに早くやれ」

〇「どうしたら防げたと思う?」「次回同じことが起こったらどうすればいい?」

また、外国人の中には、自分のメンツ(プライド)を優先させるが故に非を認められないタイプの人もいます。文化的背景が影響しているため、こちらが頭ごなしに叱りつけたり、相手の言い分に聞き耳を持たない態度を取るのは逆効果です。特にメンツを重んじる中国人の中には、そのような言い訳が多いタイプの人もいます。

詳細は、「中国人と働くストレスどうにかしたい!原因と対策は?」の<ケース③【仕事面】言い訳が多い>の記事本文をご一読ください。

タイプ④報連相しない型

「報連相しない型」の特徴は

  • 適切なタイミングで報連相ができないこと
  • 失敗などの重大な報告を後回しにしてしまうこと

などが挙げられます。その解決策は、上司としての報連相の受け方を変えることです。

行動分析学を応用し、ほうれんそうに対する上司、リーダーの心得を覚えておいてください。おひたし(怒らない、否定しない、助ける、指示する)です。

今まで「失敗しました」という部下の報告に対し、「何をやってるんだ!」と頭ごなしに叱ったりはしなかったでしょうか?相手は言いにくい失敗の報告を誠実に実行してくれました。にもかかわらず、相手の話に聞く耳を持たないこの受け方では、部下は報告することを怖がったり、後回しにしてしまいかねません。報連相しない部下の原因を作ったのは、今までの上司の対応にあったのかもしれません。

相手の行動を変化させるためには、自分の行動で返すしか方法はありません。例え失敗の報告だったとしても、早く報告したことを褒めてください。そして、失敗をフォローしたあとは、今回の失敗を踏まえた対応策を一緒に考えていくのが上司としての役割です。報連相をしたときに上司から頭ごなしに叱られたり、報連相をすることにメリットや見返りを感じられないなど「嫌な経験」をさせないような対応を心掛けましょう。

報告したのに叱られた、連絡したのに無視された、相談したのに親身に聞いてもらえなかった、などの対応をしてしまっている上司の方は今後改善が必要です。報連相をしろ!とやみくもに命令するのではなく、普段の小さな報連相を受けるときに、相手の起こした行動に対する見返りを与えてあげるように意識してみてください。

まとめ

いかがでしたか。

みなさんがお悩みの「困った部下」に当てはまるタイプはいたでしょうか?

「困った部下」の対処を考える場合でも、ご自身が変わる方法を中心にご紹介しました。

部下を変えるより、ご自身が変わったほうが近道かもしれません。視野を広げ、上司力をアップするためにも、是非今回ご紹介した方法をお試しください。

この記事は続編も予定しておりますので、ご期待ください。

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Haruna Ozawa

氏名: 小澤春奈(OZAWA HARUNA) 東証一部上場の商社にて営業、IR広報で社外対応の実績を積んだ。 その後、「来日した外国人を教育を通して支援したい」という想いから、都内日本語学校に転職。ミャンマー校の立ち上げ、現地校の指導計画立案/実施などの現場の指導体制を整え、帰国。日本・ミャンマー現地合わせて延べ5200人の外国人留学生の現場責任者として指導にあたり、多くの学生を日本社会に送り出す。 日本語学校に8年間勤務し、退職、その後インマイブック株式会社に入社し、教育事業部部長に就任。2021年、多国籍キャリアアップ研修サービス「ALOTE」を立ち上げ、現在に至る。

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