濃厚?!中国人は、一度会ったら友達で、次からは家族扱い?
初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。<外国人と働く>をテーマに執筆しています。
外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。
今回は「中国人の交友関係」についてお話しします。この記事では、中国人独特の交友関係についてご説明しています。日本人との認識の違いと、そこから来る誤解発生を防ぐことができます。
中国人の言う「よく知ってる」友達って?
みなさんが「あの人のことはよく知ってる」と言える友だちとは、どんな関係の人でしょうか?頻繁に飲みに行く人でしょうか。10年来の友人でしょうか。
しかし、中国人にとっては「見知っている人」レベルはほとんどが「よく知ってる」と同義語です。私が遭遇したトラブルを2例ご紹介したいと思います。
中国人の「よく知ってる」トラブル①
これは、私が日本語学校で担任をしていたクラスで実際にあったトラブルです。
当時、私は3クラスの担任をしていました。Aクラスの趙さん(仮名)が学校に顔を見せなくなったため、自宅を訪問することになりました。趙さんは男性だったため、一緒に訪問してくれる学生をBクラスとCクラスで探すことにしました。そこで学生の中に知り合いがいるかどうか尋ねてみました。
私: 「Aクラスの趙さんの友だちはいませんか。彼が休んでいるので、私と一緒に様子を見に行ってほしいんですが。」
Bクラス陳さん: 「私、よく知っています。趙さんは友だちですよ。それに私の友だちのお兄さんですよ。」
私: 「本当ですか。じゃあ、その友だちも一緒に行きましょう。弟さんなんですよね?」
陳さん: 「いいですよ。趙さんの弟も誘います。」
しかし、当日待ち合わせ場所に来たのは趙さんの弟ではありませんでした。趙さんには弟はおらず、遠い親戚で面識もほぼない他校の学生でした。当然趙さんの家も知らなかったので、私の持っていた住所録から何とかたどり着き、結果趙さんには会えました。しかし、「よく知ってる」という認識ちがいで混乱が起きてしまいました。
中国人の「よく知ってる」トラブル②
これも私が日本語学校で遭遇したトラブルです。
私の担任業務の一つに、学生に学費納入を促すこともありました。半年ごとに30数万円を納入してもらうのですが、留学生にとっては非常に大金であるため、担任が事前に納入予定を確認していました。
中国人留学生の大半はご両親が裕福であるため、それほど学費のトラブルはなかったのですが、ある真面目な男子学生が期日になっても学費を払わなかったことがありました。納入の遅れ自体はそれほど珍しいことではなかったのですが、普段見ている彼とは様子が違ったので、事情を聴いてみました。
すると、「友だちにお金を貸したので、学費が足りなくなった」と話すのです。しかもその友だちとは一度会っただけの名前しか知らない人だと言います。連絡もWeiboでしかできないと・・・。
「よく知ってる」友だちに貸したと話していたので、私も納入期限が来るまでには払えると思っていました。男子学生も貸してしまった手前、学費のために返してほしいとなかなか言い出せなかったのでしょう。実際は一度しか会っていない知り合いに何十万もの大金をポンっと貸すことにびっくりしてしまいました。
「よく知ってる」の認識の違いに気を付けて
私の知っている中国人の多くは、とてもフレンドリーで面倒見がいい印象です。
出会ったばかりこそ、大人しく見え、簡単には懐に入れないように感じられます。しかし、顔を合わせる度に仲良くなり、段々とお互いの話をするようになります。そして、個人的な頼みごとをされたり相談を受けるようになれば、それなりに親しくなれたと私は感じます。
残念ながら、その段階では中国人のコミュニティに入りこめたとまでは言えないでしょう。中国人のコミュニティに入り込んだ仲間となるには「自己人」になる必要があります。「自己人」はズージーレン(zi ji ren)と発音します。コミュニティ内側の仲間、身内、という意味を示します。自己中心的な人という意味ではありませんよ!この自己人になるには一朝一夕にはいきません。
より仲良くなるには、自己人=身内 の関係になろう
先ほどの章で、「自己人」について少しお話ししました。
「自己人」は仲間、身内という意味合いなのですが、中国人コミュニティの核は自己人より近い者で構成されています。この核の内側で、「自己人」より更に近い存在が「自家人」ズージァレン(zi jia ren)です。これは家族と同じで、コミュニティ内側で自分に一番近い存在です。
「自己人」は強固な絆
血縁関係がない他人が自家人になるのは婚姻関係などが考えられますが、自己人になることは可能です。自己人は単なる友だちの関係ではなく、固いきずなで結ばれた強固な関係です。
この絶対的な信頼関係の上に成り立っている核の内側に入るのは簡単ではありません。核の仲間に入れてもらうためには厚くて高い壁が存在します。「この人は絶対に裏切らない」という信頼を構築する努力を相手に見せる必要があります。
しかし、コミュニティの核に加えてもらえば、彼らは内側の人間を何があっても守ろうとします。自分と同じ運命共同体と考えているからです。中国は歴史的に戦争や動乱など様々な苦難を経験し、自らの力で生き抜いてきました。その経験から生き抜くための術を、コミュニティの核を作ることで身につけてきました。自分の身は自分で守るという中国人の中国人の絆の強さは、このコミュニティの核が大きく作用しています。
「熟人」と「外人」
コミュニティの核の外には、更に2種類の人が存在します。「熟人」シューレン(shu ren)と「外人」ワイレン(wai ren)です。
「外人」はその字のごとく、外の人、つまり自分の意識の外にいる人です。外国人という意味もありますが、単に「外人」というときは知らない人を指します。意識の外にいる人なので、「外人」に対する態度はそっけないものです。
「熟人」へ昇格した方法
実際に私が上海に行ったとき、初めて行った食堂ではそっけない態度をされました。注文通りのものは出てきましたが、接客態度は冷たく笑顔もありませんでした。
2回目は現地生活が長い先輩と一緒に行きました。先輩は「可愛がっている後輩」とお店の人に紹介してくれました。するとお店の人の態度が一変。笑顔でいろいろと質問して、おかずをサービスしてくれたり、お茶を注いでくれたりしました。私はその先輩のおかげで「外人」から「熟人」に昇格できたのだと感じました。
もちろん紹介は有効な手段です。しかし、たとえ言葉ができなくても手振り身振りを交えて笑顔で接すれば、「熟人」になるのは難しくありません。「熟人」になれば、中国人にとっての「よく知ってる」人として扱われるでしょう。
中国人の交友関係、距離の詰め方
個人的な質問をしてグイグイ迫る
先ほど、食堂の店員がいろいろと質問してきたとお話ししましたが、それこそ中国人の親愛のしるしなのです。
興味を持った人に質問をして、その人のことをもっと良く知ろうとするのが中国流なのです。ともすれば、「え、そんな質問するの?」と驚く方もいるかもしれません。具体的な質問としては、年齢、家族構成、恋人や配偶者のこと、趣味など。
給料の質問へのうまい切り替えし方
また、意外と多く質問されたのが給料についてでした。日本人はお金の話を一種のタブーと見なす人も多いかもしれませんが、多くの中国人は興味を持っています。金額をはっきり言えない場合は、私は相手に質問を返したりしました。
「いくらだと思いますか。Aさんは給料いくら?」と聞きます。「…そんなにもらってるんですか。私はそれより少しだけ多いかな」など。自分のことも話したいと思っている人が多いので、質問を返すと話が弾みますよ。
実際に私が日本語学校で学生と仲良くなったのもその方法でした。日本人はそっけなくみられがちなので、少し個人的な話をすると喜ばれました。趣味の話をしたり、最近自分がはまっているものを紹介したり。意外性のある趣味の話をすると盛り上がって写真をせがまれることが多かったです。
私の場合はキックボクシングの動作を見せて、遅刻したら先生は怖いですよ。とジョークを言ったりしました。反対に学生に質問して、ダンスや歌、イラストなどの特技を教室で披露してもらったりしました。
中国式は「熱烈歓迎」、日本式は「段階的な接近」
中国人の距離の詰め方は日本人のそれとは異なるので、急すぎると感じる方もいるでしょう。
中国ではとにかく「熱烈歓迎」でグイグイ仲良くなるスタイル。「さあ、食事に行きましょう」「お酒はどうですか」「たばこはいかがですか」と歓待してくれます。中国式の乾杯は本当に杯を乾かす、飲み干す形式。食事・お酒の席でざっくばらんに語り合い、相手との距離を詰める方法です。
対して日本人は「段階的な接近」で距離を詰めますよね。少しずつ様子をうかがうことが多い気がします。食事に誘うのも、「今度よろしければご一緒に…」という文句です。今度といっても具体的に日時を決めないことも多いでね。また、公私混同をせず、あまり自分のことを仕事相手に開けっ広げに話さないのも日本人の特徴ではないでしょうか。
この両者の違いを理解した上で、お互いに歩み寄ろうとすれば今まで以上に距離は縮まるはずです。ぜひ仕事にもお役立てください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
中国人と日本人では、親交の深め方が異なります。日本人流のコミュニケーションでは、中国人には仲間と認められないかもしれません。「距離の縮め方」を知っているのといないのとでは、大違いです。
民族間/文化間の違いを諦めるのではなく、受容し、共感を持って受け入れられるといいですね。
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