部下の育て方に正解はない!ケーススタディーで学ぶ部下への接し方(アプローチ方法)の定説と逆説 部下指導の選択肢①

初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。<外国人と働く>をテーマに執筆しています。外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。

今回は「部下育成、部下への接し方」についてお話しします。

この記事を読めば、部下への接し方(アプローチ方法)について理解できます。また、指導アプローチ方法を複数準備しておくことのメリットについても解説しています。

また、この記事は、

島原隆志著、ぱる出版「はじめて部下を持ったら インバスケット式上司の複眼思考法」2015年 

を参考文献としました。是非、最後までお読みください。

「複数の選択肢を持つ」とは具体的に?

部下指導についてお話ししていくのですが、「複数の選択肢」とは具体的にどういうことか、例を挙げてご説明したいと思います。

まず、部下指導の定説のひとつ「褒める」と、その逆説「叱る」の使い分けを見ていきましょう。

「こんな場合は〇〇を試してみる価値がある」「こんなタイプの部下には〇〇が有効ではないか」という仮説を立てみました。ご自分の部下に当てはめて、想像しながら読んでみてください。

こんな場合は定説「褒める」を試してみる

ひとつめは、「褒める」が有効である場合。褒めることで部下のモチベーションが上がり、日頃の努力を労うことができるケースです。

普段はあまり脚光を浴びるような花形業務を担当していない部下は、密かに周囲から承認されたいと思っています。縁の下の力持ち的なその努力にスポットライトを当てて、評価することが効果を発揮するでしょう。

定説褒めるが有効な場合

こんな場合は逆説「叱る」を試してみる

ふたつめは、「叱る」ことが有効な場合。このタイプは、褒めるべきではないポイントで下手に褒めてしまうと、褒められることに慣れ過ぎてしまう恐れがあります。褒められて当然、上司は優しくて当然、と勘違いしてしまうかもしれません。

自分がチームの和を乱していることに気付かず、個人プレイに走ってしまっていたら、本来の役割に気付かせてあげることが必要です。そのためのアプローチは褒めるではなく、「叱る」が適しているかもしれません。

逆説「𠮟る」が有効な場合

ケーススタディーで学ぶ部下との接し方5選

定説「褒める」、逆説「叱る」はどっちが正解?

では、「褒める」「叱る」の具体的な役割と注意すべき点を比較してみましょう。

定説褒めると逆説叱る

「褒める」のアプローチの基本は、「励まし、モチベーションの原動力」です。ここにメリットを感じて実践されている方も多いでしょう。しかし、ここで【?(クエスチョン)】、優しい上司を演じるために褒めてはいないか省みてください。

確かに褒める行為にはたくさんのメリットがあります。しかし、褒めること自体が目的になってしまっていたら、注意が必要です。褒めようとばかり考えてしまって、間違った褒め方、目的ちがいの褒め方をしている可能性があります。やみくもに褒めればいいというものではないんです。

反対に「叱る」の基本は、「𠮟るべき時に集中して叱る」「相手の成長を促すアドバイス」です。しかし、気をつけなければいけないのが、叱った後のフォローです。叱るときの注意点はいくつかありますが、相手が反省しているのに畳み込むように叱ったり、人格否定するように叱るのはNG。叱った後もずっと引きずることがないようにフォローを忘れないようにしましょう。上手な叱り方をすれば、褒めるのと同様、部下にいい影響を与えることができるでしょう。

「褒める」も「叱る」も適切な相手に適切な方法をとれば、効果は出るはずです。どちらが正解と決まっているわけではないので、この二枚の手札をうまく使えるといいですね。

「褒める」と「叱る」の詳細については、こちらの記事で詳しくご説明しているので、是非お読みください!

< 「褒め上手」は気づき上手!あの殺し文句で褒めると、仕事も人間関係もうまくいく! >

< デキる上司の上手な叱り方はコレ!時代遅れのダメ出ししてませんか? >

定説「相談に積極的に乗る」、逆説「のめり込まない」はどっちが正解?

定説積極的に乗る逆説のめり込まない

次の定説「部下からの相談には積極的に乗る」に関してはどうでしょうか?これに対しては「当然だ」という意見が多いかもしれません。部下から相談があるということは、自分では解決できない位のかなりのSOSサインだと考えてもいいでしょう。深刻な事態に陥っていることも予想されます。相談してくれるということは、信頼されていることでもあるので、しっかり相談に乗ってあげるべきです。

しかし、気をつけなければならないのが、部下が気軽に相談できる環境を作れているかどうか。悩んで悩んで、もうどうしようもできない状態まで抱え込ませてはいないでしょうか。相談に積極的に乗るという姿勢を見せるのであれば、相談をしやすい環境づくりにも配慮しなければなりません

逆説は「相談にのめり込まない」ことです。良い上司は相談に乗るのが当たり前、という思い込みがあるかもしれませんが、あくまでも課題は相手のものです。上司として責任を感じてしまって、つい解決まで付き合ってやろうと考えてはいけません。運よくその問題に関しては解決できても、部下の中にある原因が取り除けていなければ、根本的な解決とは言えません。

また、部下の相談事に気を取られて、自分の業務が疎かになったり、精神的な負担になってしまうこともありますので、注意が必要です。「全て自分に任せておきなさい」と解決まで請け負うべきではありません。相談事はあくまでも「部下の課題」ですので、部下本人が解決するための支援やアドバイスに留めておくのが賢明でしょう。

定説「変化を見逃さない」、逆説「変化に振り回されない」はどっちが正解?

定説変化を見逃さない逆説振り回されない

定説「部下の変化を見逃さない」は部下指導の基本とも言えるポイントです。褒めたり叱ったりするためにも、部下の行動の変化は敏感に察知していなければなりません。普段と違う行動をしているということは、何か変化の原因があるはずだからです。

例えば、いつも始業20分前に出社している部下が、最近始業開始時間ギリギリに滑り込んでくるようになったとしたらどうでしょうか?健康上の問題かもしれませんし、生活リズムが狂ってしまうような問題を抱えているのかもしれません。業務に差し支えないので何もしない、という選択肢もありますが、部下の変化を放置し大きなトラブルに発展する前に、声をかけてあげる気遣いも時には必要です。大きなトラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。

逆説「変化に振り回されない」とは、部下と自分は違う人間だと割り切ることです。相手の変化に対し全て反応していたら、部下を複数持っている場合、対応しきれなくなる恐れもあります。変化の全てがマイナス要因とは限らないのです。もし、相手の変化が自分にとって普通じゃないと感じても、相手の全ての行動を分析しようと思いつめないでください。

「君のことを気にかけてるよ」という姿勢は見せつつも、それが重大な変化なのかの見極めをしたほうがいいでしょう。変化ばかりに気を取られていると、仕事の成果のほうが疎かになってしまうかもしれません。

定説「部下の希望を聞く」、逆説「聞かない」はどっちが正解?

定説希望を聞く逆説聞かない

定説「部下の希望を聞く」とは、部下という人間が、会社という組織で何を得たいのか、何を実現させたいのか、を明確にすることです。採用面接での質問にもある項目ですが、部下のキャリア形成にも関わる重要な内容です。と言うのも、組織(会社)が個人(部下)に対して期待することと、部下の希望が一致していなければ、離職の危険性をもはらんでしまうからです。それを防ぐためにも、定期的に面談などで部下からの聞き取りを行う必要があります。

しかし、部下の希望を聞くうえで、相手に勘違いさせてはならないのが、個人の希望が全て通ると思わせないこと。個人の希望は上司として把握しておく必要がありますが、組織の人材配置がそれに全て合致するわけはありません。適材適所で組織が回っていることも部下に理解させる必要があります。

これをより現実的にしたのが、逆説「部下の希望は聞かない」です。極論ではありますが、組織は個人の自己実現のために存在しているわけではありません。組織の目標のために、個人が貢献できるかどうかが重要です。

ですから、「これをしたい」「この部署に行きたい」という個人の希望を満たすのであれば、会社からの要求(役割)をこなせているかを考慮しなければなりません。もし、個人としての希望があるのであれば、「その実現のために自分自身が何をすべきか、何が必要か」を部下に理解させる必要があります。希望に対して聞く耳を持たないのではなく、希望実現の権利とそのために果たすべき義務を説明していきましょう。

定説「部下を信じる」、逆説「信じない」はどっちが正解?

定説部下を信じる逆説信じない

定説「部下を信じる」とは、部下に仕事を任せる姿勢にもつながります。部下を信じ仕事を任せることは、上司の力量が試される場でもあります。

私が執筆した記事のひとつに「人材育成における権限委譲」について書いたものがあります。山本五十六元帥の「やってみせ」を基に、人材育成を三段階に分けて説明しました。第一段階のティーチング、第二段階のコーチング、そして第三段階のエンパワメント(権限委譲)です。ここで論じているのは「部下を信じて見守ること」の大切さについてです。つまり、定説「部下を信じる」に合致した内容になっています。

嫌われる上司の行動のひとつに、「任せると言ったのに、あれこれ口出し手出ししてくる」というのがあります。任せると決めたからには、必要以上の監視はせず、報告は受けても見守ることに徹するべきだと説明しています。

< 今のやり方じゃもったいない!コーチングとティーチングの違いを理解して使い分ける。部下育成のためのスキルとは? >

逆説「部下は信じない」とは、チェックを定期的に行い、部下を牽制するやり方です。定説を性善説だとしたら、逆説は性悪説と表現することができるでしょう。人間は間違える生き物です。それを前提に、適宜チェックすべきだとする考え方です。そのチェック内容は以下の3つの観点から行いましょう。

  1. 情報に部下の主観が入っていないか
  2. 仕事のプロセスは適切で成果が出せているか
  3. 不正が行われていないか

このチェックはあくまでも部下を重大なミスから守るためであり、部下を糾弾するためのものではありません。間違えないでいただきたいのは、部下が全て自分の思い通りに動くと勘違いすること。部下に仕事を任せたのは上司であるあなたなのですから、責任を負うつもりで部下をフォローしなければなりません。

部下指導のアプローチ、結局どっちが正解?

世の中には星の数ほどの「部下指導法」が存在し、部下指導のノウハウについて書かれた書籍やサイトであふれています。

中には「〇〇してはいけない」「絶対〇〇すべき」と断言しているものも多いですよね。

しかし、部下とひとくちに言ってもいろいろなタイプに分かれます。全ての人に対して同じ指導法でいいわけはありませんし、人との接し方に絶対的な正解はないと考えます。

例えば、先ほどの「定説」「逆説」の比較をしたらよくわかります。何度も繰り返される論争のひとつとして存在する、「褒めて自信をつけさせる」のがいいのか、「間違いを指摘して叱ってあげる」のが正解なのか。もちろん相手にもよりますし、その場面でも変わってきます。同じ部下に対してでも、良い行動は褒め、悪い行動は叱ればいいのです。正解はひとつではありません。

恋の駆け引きではありませんが、「押してダメなら引いてみよう」とやり方を変えることを頭の片隅に置いておきましょう。「これでなければダメ」という思い込みを捨て、柔軟に考えてみましょう。

1という方法でアプローチして効果が出なければ、アプローチ方法を2に変えてみる。Aという部下には効果があったので、Bという部下にも同じアプローチをしてみる

正解が何であるかを決めつけず、部下指導のアプローチはたくさん手札を持っておくと上手くいきます。今回は部下指導の手札をケーススタディでご紹介します。

2つ以上の選択肢を持っておくことのメリット

部下育成には「定説」と「逆説」があり、人によっては定説以外を全否定されるかもしれません。「時代にそぐわない、間違ったやり方だ」という人もいるでしょう。

しかし、部下の数だけ個性があるように、人によって欲しがっている言葉、好ましい接し方は異なります

一概に定説だけが正しいともいえませんし、逆説が間違っているとも断言できません。手札は数多く持っておいた方が武器になるというもの。複数の選択肢を持つということは、武器をたくさん装備することに似ています。それは非常に大きなメリットです。

ひとつの方法がダメだったとしても、敢えて逆のアプローチをしたら成功する可能性もあります。ひとつだけのアプローチ方法に頼るのではなく、相手によって柔軟に対応することで、「上司力」を養うことができるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

部下の接し方ひとつをとっても、複数の選択肢が考えられます。

定説にこだわって指導することもひとつの方法ですが、時には柔軟に見方を変えることでも効果を発揮します。

是非、部下の方への接し方の参考にしてみてください。

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Haruna Ozawa

氏名: 小澤春奈(OZAWA HARUNA) 東証一部上場の商社にて営業、IR広報で社外対応の実績を積んだ。 その後、「来日した外国人を教育を通して支援したい」という想いから、都内日本語学校に転職。ミャンマー校の立ち上げ、現地校の指導計画立案/実施などの現場の指導体制を整え、帰国。日本・ミャンマー現地合わせて延べ5200人の外国人留学生の現場責任者として指導にあたり、多くの学生を日本社会に送り出す。 日本語学校に8年間勤務し、退職、その後インマイブック株式会社に入社し、教育事業部部長に就任。2021年、多国籍キャリアアップ研修サービス「ALOTE」を立ち上げ、現在に至る。

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