目標とする「理想の上司像」とは?上司として取るべき行動の具体例を簡単に解説! 部下指導の選択肢②
初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。<外国人と働く>をテーマに執筆しています。外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。
今回は「部下育成、理想の上司像」についてお話しします。
この記事を読めば、上司として取るべき行動のついて理解できます。また、選択肢を複数準備しておくことのメリットについても解説しています。
この記事は、
島原隆志著、ぱる出版「はじめて部下を持ったら インバスケット式上司の複眼思考法」2015年
を参考文献としました。是非、最後までお読みください。
理想の上司としての在り方「複数の選択肢を持つ」とは具体的に?
部下に対する上司としての在り方についてお話ししていくのですが、「複数の選択肢」とは具体的にどういうことか、例を挙げてご説明したいと思います。
まず、理想の上司像の定説のひとつ「部下が失敗した際は上司が責任を取る」と、その逆説「部下に責任を取らせる」との考え方の違いを見ていきましょう。
「この説の場合の根拠はこれだ」「こういう考え方もあるのではないか」という2例を挙げてみました。ご自身の考え方に近い方、または、ご自身の置かれた環境に適しているのはどちらか、想像しながら読んでみてください。
定説「上司が責任を取る」べきだという根拠は?
ひとつめは、部下が失敗した際「上司が責任を取る」べきだという考え方の場合。根底にあるのは「上司は部下が行った仕事によって成果を上げている」という考えです。自分でガシガシと仕事をこなしてしまうプレイイングマネージャーならいざ知らず、通常上司がこまごまとした業務をこなすわけではなく、部下に指示をだし、チームをまとめることで成果を上げている場合が大半です。
実際に失敗してしまったら、実行責任がある部下は当然落ち込むでしょうし、モチベーションも一時的に下がってしまうでしょう。しかし、部下ひとりが責任を取れるかと言うと、必ずしも一人きりでカバーしきれるとは限りません。
そこで登場するのが上司であるあなたです。普段の業務を部下に指示している上司は、部下がした失敗の責任を取れる唯一の存在です。部下を指導/教育している上司にしかできないことなのです。
「部下の失敗をかぶるなんて…」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、責任を取って終わりではなく、その時の失敗は次の教育のための絶好の機会でもあります。教育の仕方によっては、部下を成長させ、大きな成功に結び付けることができるのです。
逆説「部下に責任を取らせる」べきだという根拠は?
ふたつめは、「部下に責任を取らせる」べきだという考え方の場合。この考え方の根底にあるのは、「部下の失敗は部下のもの」ということです。あくまでも失敗したのは部下自身なので、責任を取るのも部下であるべきだという考え方です。
一見、非情な上司のようにも思えますが、上司が責任を取るのが当たり前になってしまうと、部下が責任を感じづらくなるという弊害が発生します。自分の失敗を認め、責任を取ることで、部下は自分事としてとらえることができるのです。
失敗を認め、それで終わりではありません。
「どうして失敗してしまったのか」
「どうすれば失敗せずに済んだのか」
「次はどの方法をとるべきなのか」
原因を究明し、再発防止に取り組むことが部下としての責任の取り方だと言えます。
上司としては、その部下の学びを促し、より良い方向に導いてあげられるといいでしょう。
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定説「上司が責任を取る」、逆説「部下に責任を取らせる」はどっちが正解?
では、「上司が責任を取る」「部下に責任を取らせる」の考え方の違いと注意すべき点を比較してみましょう。
「上司が責任を取る」の考え方の基本は、「上司の役割としての責任の取り方」です。先ほどの章でも記載しましたが、部下の失敗の責任を取れる権限があるのも、その能力があるのも、直属の上司だけなのです。
その際に注意しておきたいのが、「部下は自省しているか」「部下の失敗を次の指導に活かせたか」の二点です。責任を取るのは良いのですが、部下が謝罪したり自責の念を感じるだけでは、その失敗はムダに終わってしまいます。
また、勘違いされがちなのが、「部下の失敗は自分の失敗」という考え。確かに、自分の指導した部下がしてしまった失敗を自分事のように感じるのは無理なからぬことです。しかし、実際に失敗したのは部下であり、その事実は変わりません。責任を取るとは言っても、失敗の原因は部下の行動の中にあることを忘れてはいけません。
反対に「部下に責任を取らせる」の考え方の基本は、「自らの失敗を認めさせ、成長につなげること」です。失敗を単なる間違いで終わらせないためにも、まず重要となるのは、部下が失敗を認めることです。酷なようですが、失敗を失敗と認めさせないまま、上司が責任を取ってしまうと、部下はまた同じ失敗を繰り返してしまいます。
「失敗を実行したのが自分であること」。そして「失敗の原因は自分の行動のどこにあったのか」。もし次の機会があるとすれば、「どうしたら再発防止になるか」。部下が成長するためには、失敗から学び取る努力が必要なのです。
部下の中には、「責任を取って給料を減らしてください」「もうこの仕事辞めます」などど言い出す人もいるかもしれません。しかし、その責任の取り方は全くの見当違いです。本当の意味で責任を取るのであれば、今後の仕事で取り返す、二度と同じ失敗は繰り返さない、それしかないと部下に理解させなければなりません。
定説「部下と同じ立場に立つ」、逆説「上司という立場を崩さない」はどっちが正解?
次の定説「部下と同じ立場に立つ」に関してはどうでしょうか?
そもそも、上司と部下ですから、場所としては同じフロアで働いていても、両者の立場が違うのは当然です。役職や年齢や経歴が違えば、部下と同じ立場に立つというのは簡単ではありません。コミュニケーションを密に取り、上司自らが部下の目線まで降りていく努力が必要になります。
同じ視点で話すには、コミュニケーションのタイミングや話しかけ方も重要ですが、思い切って環境を変えるのもひとつの手です。カフェでのお茶、ランチ、飲みに誘うのもいいでしょう。オフの環境にすることで、部下の心の垣根もなくなり、本音を聞きやすくなります。が、飲めない部下にお酒を強要するのは、アルハラとも取られかねないので注意してくださいね。
逆説「上司という立場を崩さない」は、一種の「けじめ」です。上司は上司、部下は部下です。アルコールが入った途端に人が変わってしまい、上司の立場も霧散する方もいますが、お酒の席の後悔はないに越したことはありません。
せっかくオフの環境で部下の本音を聞くチャンスであるにも関わらず、自分のうっ憤を晴らすための場にしてはいないでしょうか?ご自身が部下の立場のときに嫌な思いをしたのを忘れて、あなた自身も愚痴/説教/自慢話の「3大嫌な酒のお供」を披露していないでしょうか?
反対に、部下が興味のある話をしようとして、人事情報や評価の話題を出してしまうのもNGです。部下にとっては気になることですので、前のめりの姿勢にはなるかもしれません。しかし、翌日になって「オフレコだから忘れて」とお願いしたところで、後の祭りですよ。
定説「部下に自信を持たせる」、逆説「部下に自信をつけさせない」はどっちが正解?
定説「部下に自信を持たせる」の考え方は、ピグマリオン効果を期待しているとも言えるでしょう。ピグマリオン効果(pygmalion effect)とは、教育心理学における心理的行動の1つです。教師の期待によって学習者の成績が向上する効果で、別名、教師期待効果と呼ばれています。つまり、「君はできる」と部下に自信を持たせれば、その通りの結果になるのです。
また、小さくても構わないので成功体験を積み重ねて行くことで、部下の自信は大きくなり、さらに良い結果が生まれる可能性もあります。とかく、自己肯定感が低いと言われている若い世代には有効な方法かもしれません。
逆説「部下に自信をつけさせない」とは、根拠のない自信の危険性を考慮しています。
部下本人に資質/能力がないにも関わらず、周囲がたきつけてしまった場合、小さなミスでは済まないかもしれません。もし部下に資質/能力があったとしても、十分な準備/計画/学習に対する努力がなければ、結果は同じことです。
業務上の権限には、責任が伴います。部下が持っている権限にはそれ相応の責任が、上司の権限にはさらに大きな責任がのしかかるものです。つまり、自分の持つ権限や能力以上のことをしようとしたら、その責任を取ることがセットでついてくるのです。部下が身分不相応のチャレンジを希望したら、上司としてGOか否かの判断をしなければなりません。
定説「理想の上司像を持つ」、逆説「完璧な理想は持たない」はどっちが正解?
定説「理想の上司像を持つ」は、ほとんどの上司の方が意識してやっているのではないでしょうか?具体的な理想像ではなくても、ぼやっと「こんな上司になりたい」というイメージは頭の中にあるのではないでしょうか?
実は、部下はあなたの思っている以上に、上司としてのあなたの一挙手一投足を見ているものです。普段の何気ない一言や行動にまで「理想の上司像」は反映できているでしょうか?
例えば、「部下の報告を細かく受ける」という理想を思い描いしていたとします。また、それを周囲に公言している方もいるかもしれません。しかし、日常的に矛盾なく、行動に起こせているか、自信がない方もいるはずです。
反対に、逆説「完璧な理想は持たない」は、余裕を持つという考え方に基づいています。理想の上司像に固執しすぎると、自分だけでなく周囲も何となく息苦しさを感じてしまうもの。むしろ、少し隙のあるくらいの上司の方が、部下は「自分がしっかりサポートしなきゃ」という意識を強めてくれるものです。部下の先に立って「Aはどうなっている?」「Bの件の報告して」という完璧な上司では、部下の成長を妨げる要因になりかねませんので、注意が必要です。
定説「冷静さを保つ」、逆説「感情を表に出す」はどっちが正解?
定説「冷静さを保つ」とは、部下にとっては絶大なる安心感につながるものです。状況を確認し冷静に客観的な判断を下してくれる上司の存在は、部下にとって非常に頼もしく感じるはずです。
現場の状況に最も通じているのは部下であり、第一線の実行部隊もまた部下です。しかし、現場の担当者である部下だからこそ、見えていない部分/気づけていない部分は存在します。上司の役割は、部下とは違う目線を持ち判断を下すことなのです。ですから、トラブル発生の際に部下と一緒にパニックを起こしてしまうと、現場はカオス状態になり収拾がつかなくなってしまいます。
逆説「感情を表に出す」は、一見、理想の上司像とはかけ離れているように感じるかもしれません。しかし、人間味のある上司にこそ、部下は「この人についていきたい」と感じてくれます。
例えば、部下の成功や幸せを心から喜べているでしょうか?
「Aプロジェクトにやっとめどがつきそうなんです」
「今度結婚することになったんです」
そんな部下からの嬉しい報告に、「ああ、そう」と冷たい反応を返してはいませんか?
冷静であることは上司としての信頼感につながりますが、それだけが理想の上司像ではありません。ある程度は喜怒哀楽を表現することで、人間的な魅力を部下に感じてもらえるでしょう。
理想の上司像、結局どっちが正解?
世の中には星の数ほどの「部下指導法」が存在し、部下指導のノウハウについて書かれた書籍やサイトであふれています。
中には「〇〇してはいけない」「絶対〇〇すべき」と断言しているものも多いですよね。
しかし、理想の上司像とひとくちに言ってもいろいろなタイプに分かれます。全ての人にとっての理想が同じであるわけはないですし、絶対的な正解はないはずです。
例えば、先ほどの「定説」「逆説」の比較をしたらよくわかります。チームによっても変わりますし、上司であるあなたの考え方も正解はひとつではありません。
恋の駆け引きではありませんが、「押してダメなら引いてみよう」とやり方を変えることを頭の片隅に置いておきましょう。「これでなければダメ」という思い込みを捨て、柔軟に考えてみましょう。
1という方法が合わなければ、2の考え方に変えてみる。Aという部下には効果があったので、Bという部下にも同じアプローチをしてみる。
正解が何であるかを決めつけず、たくさん手札を持っておくと上手くいきます。
2つ以上の選択肢を持っておくことのメリット
部下育成には「定説」と「逆説」があり、人によっては定説以外を全否定されるかもしれません。「時代にそぐわない、間違ったやり方だ」という人もいるでしょう。
しかし、部下の数だけ個性があるように、人によって欲しがっている言葉、好ましい接し方は異なります。
一概に定説だけが正しいともいえませんし、逆説が間違っているとも断言できません。手札は数多く持っておいた方が武器になるというもの。複数の選択肢を持つということは、武器をたくさん装備することに似ています。それは非常に大きなメリットです。
ひとつの方法がダメだったとしても、敢えて逆のアプローチをしたら成功する可能性もあります。ひとつだけのアプローチ方法に頼るのではなく、相手によって柔軟に対応することで、「上司力」を養うことができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
上司としての在り方ひとつをとっても、複数の選択肢が考えられます。
定説にこだわることもひとつの方法ですが、時には柔軟に見方を変えることでも効果を発揮します。
是非、ご自身の理想の上司像を探す際の参考にしてみてください。
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