デキる上司の上手な叱り方はコレ!時代遅れのダメ出ししてませんか?
初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。<外国人と働く>をテーマに執筆しています。
外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。
今回は「叱り方」についてお話しします。
この記事では、怒る/叱るの違い、間違った叱り方について解説しています。また、より効果的な叱り方を学ぶことができます。
絶対ダメ!こんな𠮟り方していませんか?
みなさんは、毎日何人と一緒に仕事をしていますか?
上司、部下、同僚、取引先、お客様…。誰かしらとコミュニケーションを取りながら仕事をしていると思います。全く人に関わらずに仕事をしている人はほとんどいないのではないでしょうか?
仕事上で何も起こらないに越したことはないですが、人間がすることですから、ミスが発生し、トラブルに発展することもあるでしょう。
そのとき、部下や目下の人に対して、上手に叱れているでしょうか?こんな叱り方をしている方、要注意です!
「何回言わせるんだよ?!」 ➡ 「自分が」何回も注意させられていることにいら立っているだけ
「A君はこんな失敗しないぞ」 ➡ 他人と比べることで相手をおとしめているだけ
「本当にダメなヤツだな!」 ➡ 相手の人格を否定しているだけ
こんな叱り方では、効果的に部下を育てることは難しくなります。上記の叱り方は、「怒る」と言ってもいい行為。
「怒る」のではなく、上手に「叱る」ためのポイントをご紹介します。
「怒る」と「叱る」の違いとは?
「怒る」と「叱る」の違いをご存じでしょうか?
行動としてはよく似ているため、混同してしまう人が多いようです。しかし、その性質は正反対なので、ビジネスでの言動としては注意が必要です。
おこる(「怒る」と「起こる」)はもともと同じ語源でした。感情が新たに生まれる/高まるところから「怒る」となりました。感情の高まりによる自分の不快感を解消する行為とも言えます。
「怒る」主体は自分です。自分本位の行動であるのには理由があります。怒っているときの感情とは、アドレナリンの分泌によって、生命の危機を回避するために発達したものです。生物として備わっている本能的なものなのです。つまり、相手を「怒る」という行為は、相手を敵とみなし、危機を回避しようと本能で行動しているのです。そのため、相手への伝え方は、強制/強要になります。
反対に、「叱る」という行動の主体は相手であるため、理性的な行為です。目的を達成するための手段の一つであり、コントロールすることが可能です。また、「叱る」は、組織や部下のための行動です。同じ組織の仲間であるため、相手を育成し、協力して問題を解決するための行為です。ですから、提案やリクエストを伝えるのが「叱る」のやり方です。
怒りを上手にコントロールするためのアンガーマネジメント
「アンガーマネジメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで開発され、怒りの感情をマネジメントするためのプログラムとして始まりました。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会では、アンガーマネジメントを「怒りで後悔しないこと」と定義づけています。
適切な怒り方を身に付ける怒り(anger)の感情と上手に付き合うための技術のことで、怒る必要があるときに上手に怒るのがアンガーマネジメントです。決して怒りをなくすことではありません。怒ってはいけないということではなく、怒る必要がある場合には、適切な怒り方をすればいいのです。
怒りを上手にコントロールできないとお悩みの方は、まずアンガーマネジメントを身につけるのもひとつの方法です。
間違った方法/間違った内容の叱り方10例
【方法】①怒鳴ったり、乱暴な言葉遣いで叱る
- ✖ 大声、威嚇、脅す、暴言
- 〇 「期待通りでなかった残念な気持ち」を伝える
大声を出して怒鳴ったり、暴言で叱るのは、「叱る」ではなく「怒る」に近い行為です。自分の感情をコントロールできず、そのまま相手にぶつけるのは威嚇と同じで、相手を怖がらせてしまいます。
怒りの感情が生まれたのは事実かもしれません。では、怒りの感情の原因は?
…それは、「相手の行動が期待と違っていたから、がっかりさせられた」からではないでしょうか?相手への期待が高かったからこそ、期待通りでなかった結果に対して残念に思い、怒りの感情に繋がったのです。「期待通りでなかった残念さ」を伝えることで、「怒る」必要はなくなります。
何かある度に怒鳴りつけていては、相手は委縮し、本来のモチベーションで仕事に取り組めなくなるでしょう。
また、あなたとの信頼関係は崩れ、コミュニケーションを取ることも難しくなります。エスカレートした場合、パワハラに発展する危険な行為です。
【方法】②一方的に決めつけて叱る
- ✖ 相手の話を遮る/聞く耳を持たない
- 〇 相手の話したいことを、一旦最後まで聞く
相手の事情をよく聞きもせず、思い込みで叱るのもよくある間違い。
全てを理解しているつもりでも、実際は現場の状況を把握していなかったり、事実を誤認している場合もあります。一方的に決めつけて叱ってばかりでは、相手は「話を聞いてくれもしない独りよがりな上司」と感じてしまいます。信頼関係も崩れますし、相手は決めつけられるのを恐れ、自主的に考えて行動する主体性が育ちにくくなってしまいます。
また、ありがちな例として、「言い訳するな」という叱り方をする人もいます。相手に事情を説明させておいて、「言い訳するな」では矛盾してしまいますよね。言い訳と思える事柄は「事実」と「感情」を切り離して聞くと、単なる言い訳かどうかを判断することができます。
【方法】③大勢の前で叱る
- ✖ 大勢の前で/特定の個室(叱る部屋)に呼び出して叱る
- 〇 相手が話を受け止めやすいミーティングスペース
大勢の前で叱るのは、意外と多くの方が経験があるのではないでしょうか?学校などでもよく行われているようですが、実は相手に恨まれやすいので注意が必要です。
自分の席に呼びつけて大勢の社員の前で叱りがちですが、できるだけ相手が話を受け止めやすい場所を選びましょう。
人前で叱ると、相手は叱られた内容より、周囲の人の前で吊し上げられた恥ずかしさが印象に残ってしまいます。相手の心は傷つき、叱った人に対する反発心に繋がります。本来の叱る目的である「相手の行動を改善させる」ことは難しくなるでしょう。
反対に、毎度毎度、特定の個室(叱るための部屋)に呼び出すのも考えものです。
いつも叱られる場所が決まっていれば、「呼び出し=叱られる=嫌な場所」という印象を相手に与えてしまいます。場所の確保が難しい場合や、極秘の業務内容でなければ、特定の個室で叱るのは避け、ラフに話せるミーティングスペースを利用するのも手です。
【方法】④ダラダラ長い時間叱る
- ✖ 30分みっちり叱る
- 〇 「叱る5要素」を押さえて短時間で叱る
叱っているとつい長引いてしまったりしませんか?それは「叱る」から「怒る」に感情が膨れ上がってしまっているからです。「怒る」行為にエスカレートする前に短時間で終わらせるのが正解。「怒る」のは、本能的でがまんが出来ない不快感の解消行為であることは先ほどもご説明しましたね。
実は30分、1時間と長く叱れば叱るほど、叱る効果は薄れてしまいます。叱られている側は、何について叱られているのか、何を改善すればいいのか、がぼやけてきてしまうのです。叱る内容も本来の話題からずれ、過去の失敗についてクドクド話始めたりします。
ポイントを抑えれば、叱る時間を1分に短縮することも可能です。詳細はこの記事の第5章、<叱り方の必須5要素>をご覧ください。
【内容】⑤他人の言葉を借りて叱る
- ✖ 「部長が改善しろって言ってたぞ」
- 〇 「部長が改善しろと言っていた箇所、どのようにすればいいか一緒に考えよう」
他人の言葉を相手に伝える叱り方をする人がいますが、また聞きした情報をただ伝えただけに聞こえてしまいます。上記の場合だと、部長に叱ることの責任転嫁をしていて、まるで「自分は関係ない」と言っているかのようです。
もし、部長から改善の指示があって、自分の意志ではない場合であっても、突き放すような無責任な叱り方はしてはいけません。部長の改善指示を実現できるように協力する姿勢を見せるのがいいでしょう。
【内容】⑥過去を遡って叱る
- ✖ 「この前の件もそうだったけど…」
- 〇 「同じミスをしないために、どうすればいい?」
叱るときにしがちな、ダラダラクドクド長時間叱る行為。つい関係のない過去の失敗も蒸し返していませんか?
もう変えようのない過去の話題を出されても相手はどうしたらいいかわかりません。本来叱るべき内容からもずれてしまい、要点がぼやけてしまいますので、叱る内容は1つだけに絞りましょう。
また、「今後どうすれば改善できるのか」という将来に目を向けた話し合いをするほうが建設的です。
【内容】⑦他人と比べて叱る
- ✖ 「A君ならこんな失敗しないぞ」「もっとA君を見習ってよ」
- 〇 「今より〇〇になってほしいと期待しているよ」
相手の行動について叱るつもりが、他人との比較をして相手を否定してしまっていませんか?
他人と比較することは、相手の内面を否定することに繋がり、劣等感を抱いてしまいます。自信喪失してしまい、仕事へのモチベーションも低下してしまうでしょう。
比較するのであれば、相手の過去、現在、未来。成長度合いを評価し、相手に期待していることを伝えることで、自信に繋がります。もし不足している部分、もっと成長してほしい部分があれば、相手へ提案する気持ちで話し合いましょう。
【内容】⑧人格を否定して叱る
- ✖ 「本当にダメなヤツだな」「こんなこともできないの?」「向いてないんじゃない?」
- 〇 「この行動は〇〇にすべきだったね」
叱るときに強い調子で話していると、相手の内面を叱ってしまうことがありますが、これは絶対にしてはいけないこと。相手の持っている人格(性格、価値観、能力)を叱ると、相手は自分自身を全否定されたように感じてしまいます。
相手がその人たる由縁(ゆえん)、バックボーンは個性であり、否定すべきではありません。単に人を傷つけるハラスメント行為になってしまいます。
叱るときにフォーカスするのは、その人の行動やその結果についてです。間違った行動を改善できれば、次に活かすことができ、より良い結果を生むことができるでしょう。
【内容】⑨自分の成功体験を押し付けて叱る
- ✖ 「私のときは〇〇で成功したんだから、君も…」
- 〇 「私も昔は▲▲して失敗したなあ」
叱るときに自分の過去の武勇伝を自慢しつつ叱るのは、自分と相手を比較して悦に入っているだけ。相手のために話しているわけではありません。上司の自慢話を聞かされているようで、相手にとっては非常に不快に感じるでしょう。
また、これは、<⑦他人と比べて叱る>に通じる間違った叱り方です。比較対象が他人であるため納得感がありませんし、時代も状況も異なるので、今回のシチュエーションでも成功するとは限りません。
過去の武勇伝よりも、失敗談からの方が学びは大きいはず。相手が本当に聞きたがっているのは、「上司も失敗を乗り越えて成長した」というエピソードです。失敗談を話すことで相手も親近感を覚えますし、失敗を繰り返さないことの大切さを感じてもらうことができます。
【内容】⑩抽象的な言葉で叱る
- ✖ 「ちゃんとやらないと」「もっとしっかりして」
- 〇 「Aの件は、週報で進捗を報告して」
抽象的であいまいな指示や叱り方は、人によって基準が異なるため、相手も自分も混乱する原因になります。『もっと』『しっかり』『ちゃんと』など、便利で使いがちな言葉ですが、相手があなたの期待している基準に達していない場合、再度叱らなければなりません。
相手も基準がわからず、どこがゴールなのか探り探り進むので、自分で正確な判断ができなくなります。叱られる際も、自分の行動の何が問題だったのか認識できず、同じ間違いを繰り返してしまいます。
叱る内容には具体性を持たせ、相手に明確に指示することが重要です。
【 間違った叱り方 10例 】
- 大声、威嚇、脅す、暴言
- 一方的に決めつける
- 大勢の前/叱るための部屋への呼び出し
- ダラダラと長時間
- 他人の言葉を借りる
- 過去に遡る
- 他人と比べる
- 人格を否定する
- 自分の成功体験の押し付け
- 抽象的な言葉
叱るときの基本の考え
叱ることが最初から得意な人はあまりいないと思います。
できるなら叱りたくない、と考えている人が大多数ではないでしょうか。
しかし、叱る行為は、相手の成長のための提案であり、リクエストなのです。相手にとっての行動であると正しく理解できれば、叱る行為自体への苦手意識も軽減するのではないでしょうか?
①今後の相手の成長のために叱る
叱るという行為は、する方もされる方も決していい気持ちではありません。
当然、叱られる側の気持ちはネガティブに偏っています。
「この人は私が嫌いなのかも」
「自分が悪いって認めるのは嫌だ」
「どうして叱られなきゃいけないのか」
つまり、叱るという行為は最初からよく思われていないのです。
しかし、あなたは叱ります。叱らなければならないのです。目的は相手の成長を促すため。それを肝に銘じて、叱ってください。
「叱ったら相手に嫌われるんじゃないか」
そんな考えがよぎるかもしれません。しかし、本当に相手のためになる叱り方は、相手を成長させ、次に活かすことができます。部下育成のために必要なことですので、より効果的な叱り方を実践しましょう。
②相手に期待していることを伝える
先ほど、「怒る」と「叱る」の違いをご説明しました。
叱る目的は、部下指導によって、組織をより良く成長させること。
つまり、相手の行動が改善し、より良い結果を出すことを期待しているから叱るのです。
叱っている理由は、「相手の行動や結果が期待通りでなかった残念な気持ち」から来ていることを相手に伝え、改善を促しましょう。
③失敗を繰り返さないための対策を一緒に考える
叱る際に重要なのは、失敗を繰り返させないこと。
相手は叱られたことで意気消沈しているかもしれません。しかし、相手が深く反省していても、改善方法がなくては再度同じ失敗をしてしまいます。叱るのは相手を精神的に追い詰めることではなく、間違った行動を改善させ今後に生かすことが目的です。
叱る側の心構えとして、改善方法の案を相手から引き出し、具体的な対策を一緒に考えることが必要になります。相手を元気づけ、次の行動へと促しましょう。
叱り方の必須5要素
この5要素だけ取り入れれば、叱るのは難しくない!
【 叱り方の必須5要素 】
- タイミングと場所の確保
- 叱る事実
- 叱る理由
- あなたの考え
- 解決策を提示させる
間違った𠮟り方が、あっという間に「相手の心に届く叱り方」に変わります。
✖ (怒鳴る)「しっかり報告しろって言っただろ!なに無責任なことやってるんだ。本当にダメなヤツだな!」
この叱り方を変える5つの要素がこちらです。
要素①タイミングと場所の確認
タイミングは、できるだけ早く。もし相手の感情が高ぶっていて、冷静に話ができない状況だった場合は、まず落ち着かせましょう。次の日には持ち越さないように、タイミングを図ってください。
場所は、相手が話を受け止めやすい所を選んで。基本的にはミーティングスペースなどの大勢の前でない場所がいいでしょう。資料を見ながら話したほうがいい場合などもあるので臨機応変に対応しましょう。
要素②叱る事実
例)発注ミスをしてしまった報告がなかった
相手の間違った行動の事実の部分だけを端的に伝えます。ここでは感情を交えずに、事実だけにフォーカスします。
要素③叱る理由
例)ミスの報告がないと、自分(上司)がフォローできず、客先に迷惑をかけてしまうから
なぜ叱るのか、叱る事実に対する理由を伝えます。相手の行動の何が問題だったのか、なぜその行動をしてはダメだったのか、を冷静に伝えます。
要素④事実に対する主観(あなたの考え)
例)とても残念な気持ち
ここで初めて自分の考えを伝えます。人格の否定になるような表現ではなく、相手の行動(事実)に対してどう感じたか、を伝えましょう。
要素⑤解決策を提示させる
例)報告を忘れてしまったようだけど、どうすれば改善できるかな?
相手の言い分を踏まえて、今後の解決策を相手から引き出します。相手から提示できないのであれば、お互いに協力して話し合い、解決策を探ることも必要です。
✖ (怒鳴る)「しっかり報告しろって言っただろ!なに無責任なことやってるんだ。本当にダメなヤツだな!」
【 必須5要素の叱り方 】
★問題発覚後、速やかにミーティングスペースに移動(要素①タイミングと場所)
上司「今日、発注ミスの報告がなかったよ。(要素②事実)これがないと、私がフォローに入れなくてお客様に迷惑をかけてしまうんだ。(要素③理由)私はとても残念な気持ちだよ。(要素④主観)」
部下「そのミスの対応に追われていて忘れていました。」
上司「そうか、でもこれは重要な報告だから、忘れずにしてほしいんだ。どうすれば忘れずにできるようになるかな?(要素⑤解決策)」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
𠮟る行為自体に苦手意識を持っている方も多かったかもしれませんが、この記事を読んでいただいたことで、叱る際のポイントがご理解いただけたかと思います。
決して叱る行為はネガティブなものではなく、相手の成長を促すための重要なものなのです。
信頼関係を崩すことなく、相手の心に届く叱り方を、是非実践していただきたいと思います。
研修サービス「ALOTE(アロット)」で「上手に叱る」ための「コーチング・ティーチング」指導
弊社の多国籍キャリアアップ研修「ALOTE」では、「コーチングとティーチング」を使ったメンター/メンティー研修を行っております。
初めて部下を持つ方にもわかりやすく、コーチングとティーチングについてご指導します。
- 外国人を部下に持った指導役の社員様向けのメンター研修。
- 指導される側の外国人社員様向けのメンティー研修。
- メンターとメンティーをペアにして実践トレーニングをするペア研修。
上記の3つの研修を、貴社向けの個別カスタマイズをしてご提供いたします。
以下のリンクから、50ページ以上に及ぶサービス詳細&講義資料の一部を全部まとめて無料でダウンロードいただけます。
ピンバック: 部下の育て方に正解はない!ケーススタディーで学ぶ部下への接し方(アプローチ方法)の定説と逆説 |
ピンバック: 部下との意識共有がポイント!上司としての振る舞いや考え方の革新の仕方とは?部下のタイプ別育成方法② |