外国人は地震で大パニック⁉3.11を教訓に日本人としてできること

ALOTE事業責任者の小澤春奈です。こちらでは<外国人と働く>をテーマに執筆しています。

外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、外国人雇用についてお話ししていきます。

今回は「もし仕事中に地震が発生したら、外国人はどうするか」についてです。

この記事を読むことで、外国人の地震に対する認識や予想できる行動が理解できます。また、地震に関して企業としてすべきことをご説明しますので、是非最後までお読みください。

「怖い!」外国人が地震に恐怖する理由

外国人が地震に対して恐怖心を抱く理由はなんでしょうか?

人は、初めての体験、未知のもの、理解できないことにに対して怖いと感じるのです。外国人が地震をどう捉えているのか、そしてその原因を考えていきましょう。

地震などの災害被害の経験がない

ご存じの通り、日本は地震大国として知られています。日本を訪れる外国人の中には、滞在時の懸念点として地震について言及する人もいます。

お年寄りやお子さんをご家族に持つ外国人はなおさらのこと。地震があったらまずどうしたらいいか。どこへ避難したらいいか。家族とどう連絡をとればいいのか。

3.11の地震発生後の福島第一原発事故が記憶に新しい外国人もいます。母国の家族から「地震があったら放射能が怖い」と訴えられたそうです。地震の正しい知識を持たないために、ただ徒に不安を募らせている外国人もいます。外国人向けの防災教育や日本人の個別フォローが必要な場合もあるでしょう。

地震発生時の建物と人のイメージ

知識はあっても地震発生後とっさに行動できない

まず、初めて地震を経験した外国人は、その場から逃げようとパニックになる可能性があります。特に免震構造の高層ビルで被災した場合、揺れを大きく感じやすいためその場にしゃがみ込むこともあります。出口に向かって殺到したり、泣き叫んで周囲の音が聞こえていない人もいます。

出身国によっては台風などの災害経験もないため、大雨や洪水などでも恐怖を覚えるそうです。雪を見たことがない外国人が大雪で喜んでいるのをSNSなどで見るのは微笑ましくていいのですが・・・。

地震をはじめとしたそれらの災害を日本で初めて経験すれば、パニックになるのは理解できます。特に地震の場合は恐怖のために固まってしまうそうです。地震による揺れだということを瞬時に理解できず、取るべき行動に移せないことも多いのです。

周囲の日本人がフォローし、落ち着かせてから避難や待機を指示するといいでしょう。

指定緊急避難場所の標識

異国での被災、外国人向けの情報不足

これは、実際に日本で地震を経験した外国人からの意見を基にしています。

まず、外国人が驚くのが、スマホの緊急地震速報アラート。日本でスマホを購入した場合、ほぼこの機能がついています。が、外国人はそれを知らずに夜中に大音量で鳴って驚いてしまうそうです。周囲の日本人の方、教えてあげてくださいね。

そして、地震発生を知った後は詳細の情報を調べる外国人。しかし、報道の日本語が難しくて理解できない人も少なくないのです。日本語学習者の中にはテレビのテロップがゆっくりなら断片的にでも読むことができます。JLPT(日本語能力試験)のN3以上がその目安です。

実際の報道はテロップ挿入が追い付かず、口頭のみで難しい文章を繰り返します。駅などで被災した場合は、運行状況も同時に把握しなければなりません。これが外国人には非常にストレスで、不安感が増してしまうのです。

緊急地震速報が表示されたスマホ画面

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外国人向けの情報発信には「やさしい日本語」が非常に効果的です。やさしい日本語は、日本で生活する外国人向けの早く正しくわかりやすい日本語のことです。

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外国人が地震を体験して感じたこと

日本人ってオカシイ!地震に慣れて、冷静な日本人

これは海外でも言われていることですが、日本人の地震慣れは有名な話です。

日本人にとって地震は日常茶飯事。いちいち反応していられないのが実情です。

日本近辺で一年間に発生する有感地震(人が感じる程度の地震)は1,000~2,000回。(公益社団法人日本地震学会HPより)震度1以上が有感地震とされていて、一日当たり平均3~5回の計算になります。

実際にゆらっと揺れを感じたくらいでは、机の下にもぐったり、避難する人は少ないのではないでしょうか。海外ではこの日本人の行動が危機感が欠如しているようにとらえられているそうです。

日本人の地震に対する異常に冷静な反応を見た外国人は一様に驚きます。なんで避難しないの?慌ててる自分が恥ずかしい、と感じる人もいるようです。

難しいコトバばかり・・・災害情報が日本語ばかりで困った

これは先ほどの章<異国での被災、外国人向けの情報不足>の内容と一部重複します。

地震発生後、安全な場所に移動するとします。そこで、一旦落ち着いたあとまずすることが情報収集です。どのくらいの規模の地震だったのか。震源はどこか。津波はあるのか。交通機関への影響はどうか。

それらの情報が全く理解できないとしたら、外国人の不安は大きいでしょう。実際に日本で被災した外国人はいろいろなツールを使ってどうにか情報収集を試みています。

例えば駅で被災し、運行状況がわからない外国人の場合。英語が堪能な日本人の友人にFacebookを使って英語で情報を流してもらうように依頼しました。リアルタイムの現場の情報ではなかったので本当に知りたい情報ではなかったそうです。しかし自分がしっかり理解できる確実な情報が入ったことで安心したそうです。

宿泊していたホテルで被災したある外国人の場合。とにかくホテルのスタッフの近くに待機して説明してもらったとのこと。また、館内放送が日本語で聞き取れなかったので、スマホの音声通訳アプリが役立ったそうです。

行政のHPを頻繁にチェックした外国人もいます。いくつかの地方自治体では、災害時の情報提供を多言語対応しています。通信環境に問題がなければインターネットが情報不足を補ってくれるでしょう。

地震のとき取るべき行動がわからない、恐怖で行動に移れない

地震の直後にすべきこと。日本人なら大体の人が理解できていますし、訓練していれば行動もできるでしょう。ドアを開けて避難経路の確保。避難時はエレベーターは使用せず、階段で移動。非常持ち出し袋を持ち、揺れが収まってから行動。

しかし、外国人の場合、どうしていいかわからない人や、怖くて何もできない人が多いようです。

パニックになって、家具が倒れないようにしがみつく人。<家具の下敷きになったり、ガラスでケガして危険です!>

逃げることに精一杯で、揺れている最中に外に飛び出す人。<状況確認しないで屋外に出るのは、オフィス街など特に危険です!>

早く逃げようと、エレベーターのボタンを連打する人。<地震でエレベーターが止まる可能性があり、危険です!>

私が日本語学校にいたときの避難訓練でも、学生たちはとても真面目に参加していました。いつもふざけている学生も、地震の映像などを見ると緊張した面持ちになっていました。防災訓練、防災教育の重要度がよくわかりますね。

地震発生時のビル群

日本人として協力できる、外国人の地震対策

やさしい日本語を使い、早く正しくわかりやすい情報伝達

やさしい日本語」とは、日本で生活する外国人への情報伝達を円滑にするために作られました。普通の日本語よりも簡単で、外国人にもわかりやすい日本語のことです。 

やさしい日本語を適切に使うことで、緊急時に外国人を救うことができます。

阪神・淡路大震災発生直後のニュースの日本語と比較してみましょう。

(変換前)阪神・淡路大震災発生直後のニュースの日本語

今朝、5 時 46 分ごろ、兵庫県の淡路島付近を中心に広い範囲で強い地震がありました。
気象庁では、今後もしばらく余震が続くうえ、やや規模の大きな余震が起きる恐れもあるとして、地震の揺れで壁に亀裂が入ったりしている建物には近づかないようにするなど、余震に対して十分に注意してほしいと呼びかけています。

このままの日本語では、外国人が理解しづらい表現が多いので書き換えましょう。やさしい日本語に言い換えるには、この5つのルールを参考にしてみてください。漢字の上にはふりがなをつけるのも効果的です。

【 やさしい日本語 変換規則 】

①重要な情報だけに限定する:  「何が起きたか」「これから注意すべきことは何か」「具体的な注意事項」など

②あいまいな表現を使わない:  NG例)「今後もしばらく余震が続くうえ」「やや規模の大きな余震が起きる恐れもあるとして」など

③難しい語彙は簡単な語彙に:  今朝➡今日 朝 / 危険➡危ない / 警戒する➡気をつける など

④災害語彙はやさしい日本語に: 避難所<みんなが 逃げる ところ> / 津波<とても 高い 波>※TSUNAMIでも伝わる可能性あり

⑤複雑な表現は短く簡単に:   一文を短くする、文節ごとをスペースで分けて書く※分かち書き

(変換後)やさしい日本語を使用したニュースの日本語

これをやさしい日本語への変換規則に基づいて書き換えると・・・。

阪神・淡路大震災発生直後のニュースをやさしい日本語に言い換えた文章

やさしい日本語変換規則の①重要な情報だけ、⑤文を短く簡単に、のルールで言い換えています。文節ごとにスペースを入れる分かち書きにし、見やすくしています。

「今朝」は③のルールに従って、簡単な語彙に言い換えました。「けさ」はほとんど同じ漢字ですが、読み方が特殊な熟字訓となっています。「今日 朝」に言い換えています。

④の災害語彙は言い換えではなく、言い換え表現を添えてあります。「余震」<あとで来る地震>と言うように、簡単な表現に言い換えてさらに<>で追加しているのです。地震の報道で今後外国人が見聞きすることが増える語彙は、記憶したほうがいいからです。毎回簡単な言葉で説明してくれないとわからないのでは、本人も困ってしまいますからね。

「注意して」「地震でこわれた建物」は③のルールに従って、簡単な語彙で言い換えてあります。

(出典:弘前大学人文学部社会言語学研究室 減災のための「やさしい日本語」研究会 「やさしい日本語」が外国人被災者の命を救います、を参照)

パニックになっても叱ったり、笑ったりしない

来日して間もない外国人の中には、地震を経験したことがない人もいるでしょう。または、ビルの高層階や閉鎖空間で地震にあったことがないかもしれません。

パニックになって屋外に逃げ出してしまっても、仕事を投げ出したわけではありません。叱ったり、笑ったりせずに、しっかりと職場全体でフォローしてあげてください。地震に鈍感になりがちな日本人とうまくバランスをとっていくのが重要になります。

防災訓練、ハザードマップ、非常持ち出し袋の準備

定期的な防災訓練や防災研修も重要です。避難経路の確認や、災害時に使われる標識や図記号を覚えておくと、業務時間外に被災しても安心です。「津波」「洪水」「土石流」などの災害語彙はニュースでも使われます。

災害種別避難誘導標識システムによる案内板の表示例(内閣府「令和3年度版防災白書」)
避難場所等の図記号の標準化の取り組み(内閣府「令和3年度防災白書」)

(出典:内閣府「令和3年度防災白書」より引用)

埼玉県川越市地震ハザードマップ

(出典:川越市 「川越市地震ハザードマップ」より引用)

ハザードマップは市区町村のサイトなどから入手可能です。水害、地震、土砂災害、などに分かれています。

また、非常持ち出し袋を職場に準備し、外国人にも場所を確認してもらうのも大切です。震災時に非常食や飲料水の備蓄がなくて苦労した人はその重要性が理解できるはずです。日本では災害後混乱した市民による食料品の強奪や暴動はありませんが、海外では発生しうるのです。

帰宅困難者・徒歩帰宅者支援について

2011年3月11日、東日本大震災が発生したのは、金曜日の午後2時46分頃でした。多くの人が職場や学校にいる時間帯。公共交通機関が運行休止し、徒歩帰宅者や帰宅困難者が発生しました。

東日本大震災3月11日の帰宅困難者推計(首都直下地震帰宅困難者等対策協議会事務局
<内閣府(防災担当)帰宅困難者対策の
実態調査結果について
~
3
月11日の対応とその後の取組~より引用>

(出典:首都直下地震帰宅困難者等対策協議会事務局 内閣府(防災担当)帰宅困難者対策の実態調査結果について~3月11日の対応とその後の取組~より引用)

内閣府が行った調査で帰宅困難者についての報告書があります。これによると、東京都内の帰宅困難者数は約352万に上った旨が報告されています。外出人口の約40%が3月11日中に帰宅することができなかったのです。被災した当日中に帰宅できなかった人を、帰宅困難者としています。

東日本大震災の際の主な帰宅手段と通常の帰宅手段の比較データ(出典:首都直下地震帰宅困難者等対策協議会事務局 内閣府(防災担当)帰宅困難者対策の実態調査結果について~3月11日の対応とその後の取組~より引用)

出典:首都直下地震帰宅困難者等対策協議会事務局 内閣府(防災担当)帰宅困難者対策の実態調査結果について~3月11日の対応とその後の取組~より引用)

今後外国人が被災したと仮定して、帰宅困難者や徒歩帰宅者となる可能性は高いです。仮定の話ですが、発生しうることは防災研修時に外国人に説明したほうがいいでしょう。

帰宅手段の確認と徒歩帰宅ルート事前調査

上記のデータは、左側が震災時の帰宅手段の調査。右側が通常の帰宅手段の調査です。通常の帰宅手段の鉄道・地下鉄の43.3%が、震災時は12.3%となっています。一方、通常の徒歩帰宅14.4%が、震災時は37.0%に増加しました。鉄道・地下鉄利用者の多くが徒歩帰宅をしたことがうかがえる結果になりました。

地震発生後、会社としては社員の安全確保に努めなければなりません。また、徒歩帰宅を選択した社員がむやみに移動し始めないよう普段からの周知が必要です。地震発生後の移動開始が間もなかったのは、家族の安否確認ができなかった人たちです。家族を心配するがゆえ、すぐに帰宅を開始する人が多かったそうです。

しかし、ルートの事前調査が不十分で、幹線道路以外の危険な道で帰宅する人もいました。また、長距離の徒歩移動ですので、立ち寄る場所が確保できないのも問題でした。

地震発生を想定して、公共交通機関を使わずに安全に帰宅できる手段の調査をしておくこともお勧め。徒歩帰宅ルートを準備する場合は、ハザードマップなどを確認しつつ安全なルートを選択する必要があります。また、休憩ができるような場所や食品が手に入る場所などを考慮しておけると安心ですね。

3.11東日本大震災の教訓を活かした地震対策を

日本は地震多発地域に注目

内閣府がまとめた防災白書でも日本の地震発生回数の多さは群を抜いています。マグニチュード6.0以上の地震回数を世界全体で見た場合、1,036回。そのうち、日本は20.5%にあたる212回となっています。

2000年~2009年のマグニチュード6.0以上の地震回数(内閣府「平成22年度版防災白書」図1-1-1を引用)

(出典:内閣府「平成22年度版防災白書」図1-1-1を引用)

これほどまでに日本近辺で地震が起こる原因は、プレートが関係しています。日本列島は、ユーラシアプレートと北米プレートの上に乗っている状態です。そこに太平洋プレートとフィリピン海プレートが移動してきて地下にもぐり込みます。このフィリピン海プレートがもぐり込むのが「南海トラフ」なのです。

外国人の中には、近い将来また大きな地震が発生することを不安に思う人もいます。東京を中心とする関東南部では、200~300年に1度マグニチュード8の巨大地震が起こっています。1923年に関東大震災が発生し、あと100年はこのクラスの地震はないと予想されています。

しかし、実際はマグニチュード7の直下地震か何回か発生しており、活動期ではとの意見のあります。特に、東京直下を震源としたでの巨大の地震発生が心配されています。

なお、2011年3月11日発生の地震はマグニチュード9.0を記録。日本観測史上最大の地震で、世界4位となる超巨大地震でした。

東北地方太平洋沖地震の経験を防災研修に活かす

これまでお話ししてきたように、日本は世界に知られる地震大国です。

外国人にとって地震大国に在留するのは不安が大きいものです。しかし、地震対策を熟知した日本人がサポートすれば話は変わってきます。外国人は正しく地震のことを理解し、備えをすることができます。

防災研修や防災訓練を会社として実施し、外国人が安心して働ける環境を整えて頂ければ幸いです。

研修サービス「ALOTE(アロット)」でダイバーシティ企業様向け「やさしい日本語」研修

外国人向けの情報発信には「やさしい日本語」が非常に効果的です。やさしい日本語は、日本で生活する外国人向けの早く正しくわかりやすい日本語のことです。

ビジネスでの指示にも活用できるやさしい日本語は、研修サービス<ALOTE>で受講いただけます。無料セミナーもご用意しておりますので、是非お問い合わせください。

弊社の多国籍キャリアアップ研修「ALOTE」では、「やさしい日本語」を含めた研修をメンター/メンティー研修を行っております。

  • 外国人を部下に持った指導役の社員様向けのメンター研修。
  • 指導される側の外国人社員様向けのメンティー研修。
  • メンターとメンティーをペアにして実践トレーニングをするペア研修。

上記の研修を、貴社向けの個別カスタマイズをしてご提供いたします。

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Haruna Ozawa

氏名: 小澤春奈(OZAWA HARUNA) 東証一部上場の商社にて営業、IR広報で社外対応の実績を積んだ。 その後、「来日した外国人を教育を通して支援したい」という想いから、都内日本語学校に転職。ミャンマー校の立ち上げ、現地校の指導計画立案/実施などの現場の指導体制を整え、帰国。日本・ミャンマー現地合わせて延べ5200人の外国人留学生の現場責任者として指導にあたり、多くの学生を日本社会に送り出す。 日本語学校に8年間勤務し、退職、その後インマイブック株式会社に入社し、教育事業部部長に就任。2021年、多国籍キャリアアップ研修サービス「ALOTE」を立ち上げ、現在に至る。

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