日本語教師が教える「やさしい日本語」の言い換え術!5割増しで伝わる情報伝達とは?
初めまして。ALOTE事業責任者の小澤春奈と申します。
<外国人と働く>をテーマに執筆しています。外国人雇用の基礎知識から外国人の生活まで、様々な視点からお話ししていきます。
今回は「やさしい日本語」についてお話しします。
この記事を読めば、「やさしい日本語」がどういうものかが理解できます。また、「やさしい日本語」の作り方のポイント、どんな人を対象に使用するのかがわかります。
「やさしい日本語」とは?
「やさしい日本語」とは、普通の日本語よりも簡単で、外国人にもわかりやすい日本語のことです。
これを使うことで、日本語があまり得意でない方とも話すことができます。
「やさしい」には、2つの意味が込められています。かんたんな言葉を表す「易しい」。そして、相手に配慮する「優しい」気持ちで話す。
いくつかのポイントさえわかれば、誰でも使うことができます。
どうして「やさしい日本語」ができたのか?誕生の経緯
1995年1月の阪神・淡路大震災がきっかけで誕生しました。震災当時、日本人だけでなく多くの在留外国人も被害を受けました。
その中には、必要な情報を受け取ることができない人もいました。日本語も英語も十分に理解できず、周囲に助けを求められない人もいました。
そこで、そうした人達のために考え出されたのが「やさしい日本語」の始まりです。災害発生時に適切な行動をとれるように表現を工夫しました。
そして、「やさしい日本語」は、災害時のみならず日常生活でも活用されています。平時における外国人への情報提供手段としても研究され、行政情報や生活情報、毎日のニュース発信など、全国的に様々な分野で取組が広がっています。
どんな人たちが「やさしい日本語」の対象になるのか?
災害がきっかけで始まった「やさしい日本語」。今では日常的に外国人への情報提供手段として活用され始めています。
では、日本にいる外国人はどんな人たちでしょうか?彼らの出身地や人数はどれくらいなのでしょうか?
在留外国人の人数と国籍は?
(参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 /厚生労働省)
日本に中長期在留している外国人は約282万人。これだけの人数の外国人が日本で生活しているのです。
- ベトナム 443,998人/25.7%
- 中国 419,431人/24.3%
- フィリピン 184,750人/10.7%
- ブラジル 131,112人/7.6%
- ネパール 99,628人/5.8%
在留外国人の日本語使用状況は?
では、外国人はどれくらい日本語ができるのでしょうか?
どんな場面で日本語を使っているのでしょうか?
日本語を使う場面で困っていることはあるのでしょうか?
日本にいる外国人はどれくらい日本語を使っているのか?
(出典:文化庁「日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査」平成13年)
日本語使用状況について、600人の外国人を対象に調査が行われました。文化庁による調査で、20年ほど前の少し古いデータですが、ご参考までに。
外国人の日常生活の中での日本語使用率は、80.4%(467人)※全体(n=581人)。実に10人に8人は何らかの日本語を使って生活していることになります。
また、日本での滞在期間との関連を見る質問項目では、滞在年数が長くなるほど「はい」の割合が高くなっており、滞在期間「6か月未満」で約6割で、「5年以上」では9割を超えていることがわかりました。
日本で生活する上で、日本語の使用は必要不可欠であることが読み取れます。調査は20年前のものなので、現在は多言語対応が進んだ手続きなどもあります。
しかし、多言語対応が生活の全てに及んでいないのが現状です。
日本で生活している外国人はどのくらい日本語を習得しているのか?
では、下のグラフをご覧ください。
こちらは日常生活の32の場面で日本語がどの程度使えているのかの調査結果です。
「簡単にできる」「難しいができる」と回答した%の多い順になっています。
(出典:文化庁「日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査」より引用)
順位を見ていくと、「食料品を買う」「あいさつ」などが上位に来ています。
より生活に密着した場面での日本語使用であれば、習得率が高いようです。特に、「聞く」「話す」の2技能を使用した場面での習得率が高い傾向です。
外国人が日本の生活で苦手な場面とは?
言語スキルは主に4つの技能に分けることができます。
インプット系の「聞く」「読む」。アウトプット系の「話す」「書く」。
日本語には文字種が多いため、特に漢字が敬遠されがちです。非漢字圏出身者であればなおのこと、「読む」「書く」が苦手な傾向があります。
それを如実に物語っているのが、「漢字で住所を書く」の習得率です。各種手続きで住所を書く場面は多いので、一見すると習得率が高いように思えます。
しかし、65.4%の外国人しか習得していない結果を見ると、外国人にとって「漢字を書く」ということがいかに難しく、心理的にハードルが高いかを物語っています。
また、「話す」の場面で習得率が低いものに、病院、役所、学校が挙げられます。これらは、より詳細な理解が求められる場面であることは明白です。
専門的な語彙が多いのですが、使用頻度が高くないため習得が困難になっています。また、外国人を対応する日本人がわかりやすく伝えられていない可能性もあります。
つまり、外国人が理解できるような対策が行き届いていないということ。このような場面こそ、「やさしい日本語」の真価が発揮されるとも言えます。
※日本語は世界的に見ても非常に習得が困難な言語とされています。日本語の何が難しいのか?どの部分が他の言語と異なっているのか?様々な調査結果を基に、ひとつの記事にまとめています。
上記の内容の記事はこちらのリンクからお読みいただけます。
< 世界一の超難易度に認定?!外国人にとって日本語が難しい理由とは? >
複雑な場面での日本語使用もだんだんと習得していく
「日常生活に必要な日本語の習得」で「できる」の割合が低かった項目。以下の5つが外国人にとって習得が困難である項目です。
しかし、日本での生活が長くなれば、徐々にではありますが、習熟度は上がります。
以下の表をご覧ください。
(出典:文化庁「日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査」のデータを参照し作成)
この表の下の2項目、日本での生活が長くてもなかなか上達しないものもあります。
やはりビジネス関連は簡単には習得できません。「言語」「作業の方法」の両方を習得しなければならないためです。
習得のためには本人の努力はもとより、周囲の日本人のフォローが必要になります。
Udemy動画「アルバイトのための日本語」で履歴書の書き方がわかる!
履歴書の書き方に関しては、Udemyで私が作成した解説動画を公開しています。アルバイトをしたい外国人の方向けに、履歴書の書き方も説明しています。
<アルバイトのための日本語 Japanese for part-time job> 働きながら日本語を勉強しよう!Let’s study Japanese while working!
※こちらは少し前に作成した動画ですので、ご了承ください。内容は変わらないので、お役立てください。
以下のURLから弊社にご連絡いただければ、無料クーポンを発行いたします。
「お問い合わせ」に『無料クーポン希望:Udemy動画「アルバイトのための日本語」』とご記入ください。
折り返しご連絡し、無料クーポンをプレゼントいたします。
日本にいる外国人は何語ができるのか?
みなさんは、街中で外国人を見かけることはどのくらいあるでしょうか。毎日?週に一回?めったに見かけない、という人もいるかもしれません。
では、もしその外国人が困っている様子だったら、どうしますか?「話しかけてみる!」という方、何語で話しかけますか?
実は多くの日本人が抱いている固定観念があります。「外国人=英語話者」という先入観です。
確かに日本人が海外に渡航する場合、英語の習得は極めて重要です。もちろんその国の公用語が一番広く話されているのは事実です。しかし、英語が共通言語になることが多いのもまた事実です。それは、海外での話。
では、日本国内ではどうでしょうか?
実は日本在住の外国人が最も話しているのは日本語なのです。以下のグラフをご覧ください。
「日本語ができる人」が62.6%であるのに対し、「英語ができる人」は44%。日本にいる外国人の10人に6人は日本語がわかるのです。
なお、「中国語ができる人」38.3%は在留外国人の約3割が中国人であるためです。
日本国内で生活することを考えると英語の習得より、日本語が優先されます。また、母国で英語を話さない、もしくは英語教育を受けていない外国人も多くいます。
そういった事情もあり、日本国内の外国人は「日本語ができる人」が多いのです。
(出典:岩田一成「言語サービスにおける英語志向ー「生活のための日本語:全国調査」の結果と広島の事例から」の調査結果より作成)
また、外国人からも「やさしい日本語」使用の希望が76%と多いようです。
意外だったのは、「機械翻訳された母国語」があまり支持されてないこと。AI翻訳の精度が上がり、私たちも使いこなせるように努力する必要がありそうです。
(出典:出入国在留管理庁、文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」より引用)
「やさしい日本語」に言い換える方法
出入国在留管理庁から「やさしい日本語」のガイドラインが公表されています。
資料の名称は「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」です。
このガイドラインは、特に書き言葉に焦点を当てたガイドラインです。お知らせなど書き言葉で情報発信をする際に、活用することができます。
また、各自治体でも「やさしい日本語」の冊子をまとめています。無料でダウンロードできますので、是非参考にしてください。
研修サービス「ALOTE(アロット)」での「やさしい日本語」指導
弊社の多国籍キャリアアップ研修「ALOTE」では、「やさしい日本語」を使ったメンター/メンティー研修を行っております。
- 外国人を部下に持った指導役の社員様向けのメンター研修。
- 指導される側の外国人社員様向けのメンティー研修。
- メンターとメンティーをペアにして実践トレーニングをするペア研修。
上記の3つの研修を、貴社向けの個別カスタマイズをしてご提供いたします。
以下のリンクから、50ページ以上に及ぶサービス詳細&講義資料の一部を全部まとめて無料でダウンロードいただけます。
実際の「やさしい日本語」の言い換え例
「やさしい日本語」誕生のきっかけは、阪神・淡路大震災でした。
震災後のニュースの日本語を「やさしい日本語」に言い換えた例があります。
言い換えた日本語がどのように変化するのか、見ていきましょう。
震災時の外国人の行動についてまとめた記事も、別途投稿しています。以下のリンクからご覧いただけます。
記事全文 < 外国人は地震で大パニック⁉3.11を教訓に日本人としてできること >
「やさしい日本語」説明箇所 <やさしい日本語を使い、早く正しくわかりやすい情報伝達>
(変換前)阪神・淡路大震災発生直後のニュースの日本語
今朝、5 時 46 分ごろ、兵庫県の淡路島付近を中心に広い範囲で強い地震がありました。
気象庁では、今後もしばらく余震が続くうえ、やや規模の大きな余震が起きる恐れもあるとして、地震の揺れで壁に亀裂が入ったりしている建物には近づかないようにするなど、余震に対して十分に注意してほしいと呼びかけています。
(変換後)やさしい日本語を使用したニュースの日本語
今日 朝5時46分、兵庫 大阪などで、大きい 地震が ありました。余震<=あとで 来る 地震>に 注意して ください。地震で こわれた 建物に 注意して ください。
※実際は全ての漢字の上部に、ルビを振ってあります。
いかがでしたか。日本人にとってはいささか短くてそっけない文章に見えるかもしれません。
一文の情報量を限界までそぎ落とし、あいまいな表現を削っています。外国人にとってのわかりやすい文章は、このような「やさしい日本語」なのです。
基本ルールは「ハサミの法則」
この章では「やさしい日本語」への言い換え方法をご説明していきます。
言い換えの基本ルール「はっきり」「さいごまで」「みじかく」。この「ハサミの法則」は以下の書籍を参考にさせていただきました。
(参考文献:吉開章「入門・やさしい日本語 外国人と日本語で話そう」アスク出版)
この「ハサミの法則」を基本ルールとして覚えておくと、言い換えは簡単になります。
「は」はっきり言う:あいまいな言い方をしない。
「さ」さいごまで言う:文末まではっきり言う。
「み」みじかく言う:一文を短くする。
この基本ルールを踏まえたうえで、具体的な言い換え方法を練習してみましょう。
①【文の単位】短く区切って言う
まず、日本語をできるだけ短く区切りましょう。
一文の中に1つの内容だけ。これが「やさしい日本語」の文章です。
一番わかりやすい構造は、「AはBです」「AはBします」などの形です。
文末は「です/ます/ください」などで、はっきりと言い切るようにしましょう。
まずは以下の文章を、短く区切ってみます。
【 原文 】10 月 22 日(日)の講座ですが、台風の接近により安全上の理由から 10 月 29 日(日)に延期させていただく事になりました。
【 短く 】10月22日(日)の講座ですが、 / 台風の接近により / 安全上の理由から / 10月29日(日)に延期させていただくことになりました。
これで第一段階の「短く区切る」ができました。
②【文章全体】整理して言う
次に、情報を整理します。
不要で過多な情報は削ります。
さらに、日本語特有の「主語などの脱落」がないかをチェックします。自分自身の話や、何度も登場する人物や物は、繰り返しを防ぐために省略されてしまいます。
外国人にはわかりづらいので、「はっきり」言うようにします。
また、この例文では「10月22日」と日付が入っているので、補足の必要はありません。しかし、「今週日曜日」などの表記の場合は、日付で表すほうがわかりやすいです。補足しましょう。
では、さきほど「短く区切る」まで終わらせたので、その続きから。
【 短く 】10月22日(日)の講座ですが、 / 台風の接近により / 安全上の理由から / 10月29日(日)に延期させていただくことになりました。
【 整理 】10月22日(日)の講座(はありません。) / 台風が接近しています。/ (学生のみなさんの)安全を守るために / (講座は)10月29日(日)に延期します。
基本的には「主語・述語」の欠落がないかをチェックします。「主語は(が)述語です(ます)」の形になっているかを確認してください。
③【単語】簡単な言葉で言う
その次は、単語を簡単にしていきます。下記に例を挙げた言葉は、「やさしい日本語」では言い換えが必要になります。
言い換えの例も併記していますので、参考にしてください。
「やさしい日本語」単語言い換えルール一覧 言い換え例つき!
【 単語の言い換え 】
1.音読みの動詞ではなく、訓読みの和語動詞を使う。
例)開始します/開会します/開演します/上映します/上演します。 ➡ 始めます。
2.複合動詞(複数の動詞が結合してできた動詞)ではなく、簡単な動詞を使う。
例)込み入った話 ➡ 難しい話 / 打ち解ける ➡ なかよくなる / 長年連れ添った ➡ ずっと長い時間いっしょにいた
3.オノマトペ(擬音語、擬態語)ではなく、具体的な言葉を使う。
例)この部屋をピカピカにしてね。 ➡ この部屋をきれいにしてください。
4.「れる・られる」ではなく、意味がわかりやすい言い方を使う。
※「見られる」という言葉は、尊敬、受身、可能の3つの意味があります。日本人でも混乱する表現ですので、以下のように言い換えましょう。
例)(尊敬)先生が桜を見られる。➡ 先生がさくらを見ます。 / (受身)彼にテストを見られました。 ➡ 彼が私のテストを見ました。 / (可能)私はメガネなしで、映画が見られます。 ➡ 私はメガネがなくても、映画を見ることができます。
5.専門用語ではなく、日常語を使う。
※業務上、避けては通れない業界用語は外国人に覚えてもらいましょう。他に言い換えができない言葉は、無理に言い換える必要はありません。<=●●●>の形で説明を追加してください。
例)スマホのバーコード決裁 ➡ スマホ<=スマートフォン>で払います。お金を払う画面(がめん)を見せてください。 / 代引き ➡ 宅配便がうちに届いたときに、お金を払ってください。
6.慣用句、敬語、俗語、若者言葉ではなく、普通語を使う。
例)(慣用句)Aさんは顔が広い。 ➡ Aさんはともだちがたくさんいます。 / (敬語)弊社にお越し頂けますか。 ➡ 私の会社に来てください。 / (俗語/若者言葉)このラーメン、マジでヤバいよ! ➡ このラーメン、本当においしい(まずい)です。
7.方言ではなく、共通語を使う。
例)このゴミ、なげといて。 ➡ このゴミ、捨てておいてください。
8.抽象的な表現ではなく、具体例を使う。
例)駐車場の数に限りがあるため、お車でのご来館はご遠慮ください。➡ 駐車場が少ないです。自分の車で来ないでください。電車やバスを使って来てください。
9.略語ではなく、省略する前の元の言葉を使う。
※コンビニ、スーパーなど生活に密着した言葉は使用して問題ありません。
例)ネトフリ ➡ ネットフリックス(Netflix) / クレカ ➡ クレジットカード
10.カタカナ英語ではなく、普通語を使う。
※トイレ、バスなど生活に密着した言葉は使用して問題ありません。
例)ポイントアップ ➡ お店のポイント<=点数>をたくさんもらうことができます。 / キャンセル ➡ 行くのをやめます。
【 「やさしい日本語」では避けるべき難しい言葉の例 】
- 音読みの漢語動詞「開始します」 ➡ 始めます
- 複合動詞「打ち解けます」 ➡ なかよくなります
- オノマトペ「ピカピカにします」 ➡ きれいにします
- れる・られる「見られます」 ➡ 見ることができます、など
- 専門用語「代引き」 ➡ 荷物が届いたとき、お金を払います
- (敬語/俗語/若者言葉なども)慣用句「顔が広い」 ➡ ともだちがたくさんいます
- 方言「ゴミをなげる」 ➡ ごみを捨てます
- 抽象的な表現「ご来館はご遠慮ください」 ➡ 来ないでください
- 略語「クレカ」 ➡ クレジットカード
- カタカナ英語「キャンセル」 ➡ やめます
④曖昧(婉曲)な表現を避ける
日本語に多いのはこの婉曲表現です。「~かもしれません。」などは可能性が100%でない場合は使っても構いません。話者が相手に伝えたい情報の精度が、本当に100%でないからです。
しかし、ただ事実を述べるだけの文の場合で、あえて曖昧さを残す表現をするのはNG。
例えば、「この道は狭いが、通れないことはない。」
この文を「やさしい日本語」で言い換えるとこうなります。「この道はせまいです。でも、通ることができます。」
この文で一番やっかいなのが、「~ないことはない」の二重否定文です。私たち日本人は自然とこの曖昧さを残す表現を多用しています。
他にも「~なくはないです」は「ある」という意味で使われます。「~しない人はいない」、「飲まずにはいられない」、「~ないとも限らない」。こういった表現は外国人にとってわかりにくいので避けましょう。
⑤【表記の方法】漢字のルビ振りや写真を添えて理解しやすくする
最後に文章全体の体裁を整えます。理解しやすくするために、以下の4つの方法をお勧めします。
1.漢字の数を減らし、ルビ振りをする。
漢字の使用数は、1つの文で3~4個までが目安です。使用した漢字には、できるだけルビ振り、読み仮名の併記をしてください。
ルビの位置は、文の上に小さく記載する方法が一番多く見受けられます。ルビが振れない場合は、以下のように(かっこ)の中に記す方法もあります。
例)漢字 ➡ 漢字(かんじ)
漢字にルビを振らなくてもいい場合もあります。一度出てきた漢字が繰り返し使われるときは、省略することはできます。
また、非漢字圏の方向けに限定して作成する場合、ローマ字/ひらがなのみでも可。あえて漢字を書かないという選択肢もあります。
2.文節ごとにスペースを入れる(分かち書き)
これは、日本語の教科書でも用いられている表記法です。分かち書き(わかちがき)といいます。
例)わたしはにほんごのせんせいです。 ➡ わたしは にほんごの せんせいです。
見てすぐに、ひとつの文節がどこまでかがわかるようになっています。
文節の判断は、終助詞の「ね」を使ってみるとわかりやすいです。例えば、わたしは(ね)にほんごの(ね)せんせいです(ね)。といった具合です。
3.イラストや写真を添える
ビジュアルで見せる。これは言語使用で理解を助ける最強の方法です。(と、私は考えています。)
ごちゃごちゃ説明せずに現物(日本語教師はレアリアと言います)を見せる。授業ではそれで一発で解決したりします。
印刷物などで、特にイラストや写真掲載の制限がない場合は是非使用してください。
4.言葉に対する説明を加える
その言葉がどうしても言い換えできない場合、説明を加える方法もあります。今後よく使うので覚えてほしい言葉でも有効です。
例えば、地震ニュースの「余震」という言葉。「あとから来る地震」と言い換えてしまってもいい言葉です。しかし、地震関連のニュースでは度々使用されることから、外国人が覚える必要も後々出てきます。
であれば、敢えて使って、説明を加える方がいい場合もあります。その際の表記は以下のようにしてください。ルビ振りも(かっこ)で併記しました。
例)余震 ➡ 余震(よしん)<=あとから くる 地震(じしん)>
【 理解しやすくなる「やさしい日本語」的表記のポイント 】
- 漢字を減らして、ルビ振り
- 分かち書き
- イラストや写真を貼付
- 言葉の説明を追加
「やさしい日本語」の目的は多文化共生
ここまで「やさしい日本語」の対象者や、言い換えの方法などをお話ししてきました。いかがでしたか。
最後に「やさしい日本語」を使う上で気をつけることをご説明します。
それは「やさしい日本語」は多文化共生のためのひとつの手段に過ぎない、ということ。
「やさしい日本語」を使えばそれですべて解決するわけではありません。万能ではないからです。他にも外国人が日本で生活するために、私たちがサポートできることはいろいろあります。是非トライ&エラーをして、より良い方法を探っていってください。
そして、その試みの中で、外国人と共生するためのひとつの手段として、「やさしい日本語」を上手に使っていきたいですね。
業界で必須な用語は覚えてもらおう
ここでご説明してきた「やさしい日本語」は外国人への正確な情報伝達のためのもの。
仕事で日本語を使う場合、全てのやり取りを行うのは限界があります。外国人社員にも日本語を覚えてもらい、日本語能力をつけてもらう必要があります。
特定の言葉を業界で日常的に使用する場合、できるだけ早く理解してほしいですよね。であれば、初期の段階で専門用語一覧を提示して、覚えてもらいましょう。可能であれば、各国語の翻訳付きで用語一覧を作成できると理解が早いです。
チェッカーを使って確認しよう
「やさしい日本語」で文章を書いてみたけど、これでいいのかわからない。そんな場合は、「やさしい日本語」チェッカーで確認いただくことができます。
以下のURLから、無料のチェッカーをご利用いただけます。
最終的には、外国人本人に見てもらうのが一番ですね。
①「やんしす」 ➡ インストールが必要 http://www.spcom.ecei.tohoku.ac.jp/YANSIS/
②「やさにちチェッカー」http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/nsindan/
③「リーディングチュウ太」 https://chuta.cegloc.tsukuba.ac.jp/
「やさしい日本語」に絶対的な正解はない
私たちが日常で使っている日本語とはかけ離れている「やさしい日本語」。
最初は戸惑いもあるかと思います。「やさしい日本語」は外国人が理解しやすいことが一番なので、「これが正解」というのはありません。
対象者がどんな人か、どう表現すればわかりやすいか、工夫した先に結果があります。
外国人社員の場合、日本語が上手ではないというだけで、知性のある立派な大人です。決して下に見たり、過度に子ども扱いせずに対等に接していただくことも必要です。
外国人と共生する社会はもう既に来ています。ひとりひとりがその意識を強く持って、行動していきたいですね。
ピンバック: 多文化共生の定義とSDGsとの関わりは?自治体や地域ぐるみの事例を具体的に紹介 |